イエローストーン国立公園の火山が2週間以内に噴火する? → しません

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The Grand Prismatic Spring in Yellowstone National Park
Jim Peaco, National Park Service(Public Domain)

イエローストーン国立公園の火山が2週間以内に噴火するかもしれない、というニュースが話題になっていました。見出しを見た瞬間に疑ってかかるような類の記事ですが、信じている人も少なからずいるようなので少し調べてみました。

イエローストーンの巨大火山 2週間以内に噴火の恐れ – News – サイエンス – The Voice of Russia

これは、イエローストーン国立公園の下にある巨大火山が2週間以内に噴火する恐れがあると、同国立公園所属の地質学者ハンク・ヘスラー氏が発表した、というニュース。結論から言えばデマです。少なくともハンク・へスラー氏はそんなことは言っていません1

ちなみに、上記記事にも引用されている上の写真は「グランド・プリズマティック・スプリング」、イエローストーン国立公園の観光名所の一つで、ただの温泉です。今回の話とはほとんど関係ありません。

***

さて、あちこちのニュースサイトで話題になっていますが、おそらく火元はここです。ただし、この記事そのものはまっとうな火山についての記事でデマではありません。

Will the Yellowstone Volcano Erupt?: KSFY

これはABCニュースグループのKSFY Televisionが29日に放映したイエローストーンの火山活動についてのレポートです。内容的には「イエローストーンは近い将来噴火するかもしれないし、しないかもしれない。はっきりしたことは分からないが、もし噴火したら大変なことになるかもしれない」というこの手のレポートとしてはごくごく一般的なもの。ここに噂のHank Heaslerさんが登場してインタビューに答えています。

ヘスラー氏のインタビューの内容もイエローストーンで起きている地震や火山活動についてのごく普通の説明です。ただ、その中で彼は噴火の可能性について「2週間」という表現を使っていました。問題の箇所はここ。

Researchers like Hank who study both seismic and volcanic activity here at Yellowstone say they are fairly certain that there will be no type of volcanic eruption here in the foreseeable future. But then we asked Hank to define “foreseeable future”.

“Now what do we mean by foreseeable future? I would say, you know a couple of weeks, and that’s what I would say with certainty.”

ハンクのようなイエローストーンで火山や地震活動について研究している研究者は、こうした噴火(破滅的な大噴火)が、近い将来起きることはないだろうと言っています。しかし、我々がハンクに「近い将来」を定義してくれと問うと、彼はこう答えました。

「近い将来がどれくらいのことを意味しているかって?そうだな、2週間、それくらいなら確実に無いといえるだろうね」

どう見てもこれは「いつ起きるかははっきり予測できない」という比喩表現ですが、これを陰謀論を信奉する人たちが、2週間はなにもない、ということは2週間後に何かあるんだ!と騒ぎ出した、というのが真相のようです orz…

あまりそういうサイトのPVを増やしたくないのでリンクはしませんが、この記事を引きながら2週間後が危ないと主張しているのは、普段から「UFOが!」とか「政府の陰謀が!」とか言っている陰謀論系のブログやYoutuberばかりです2。このヘスラー氏のコメントを曲解する以上のソースを提示しているものはありません。とても信頼に足る情報とはいえませんね。

***

さて、じゃあ実際のところどうなんでしょう?イエローストーンは噴火するんでしょうか?結論から言えば、分かりません。

カルデラ破局噴火と呼ばれる、地球全体の気候に影響を与えるような巨大噴火が起きうる場所として、イエローストーン国立公園が上がっているのは事実です。イエローストーンは、約220万年前、約130万年前、64万年前の3回こうした大噴火を起こしたことが分かっており、周期から考えても次がいつ起きてもおかしくありません。ただし、それは数千年、数万年という時間軸の話です。

一方で、近年イエローストーンの地質的な活動が活発になってきているのも事実のようです。今世紀に入ってから、地面か隆起したり、池が干上がったり、蒸気の噴出が増えたりといった現象がおきているとのこと。やっぱり!と言いたいところですが、これを新たな巨大噴火と直接結びつけるのはあまりに早計です。かたや数万年単位、かたや数年単位。誤差のレベルというのも気がひけるほどスケールが違う話です。

我々は今目の前で起きていることが、「平穏時のちょっとした変動」なのか「新たな破局噴火の前兆」なのかを見分ける術を持っていません。記事の中で研究者が言っているのように、2週間後に起きるかもしれませんし、1万年このままかもしれません。どんな火山にも噴火の可能性があり、言えるのは今活動が活発なのか穏やかなのかだけです。穏やかだからといって噴火しないとは限りませんし、活動的だからといってすぐに大噴火するとも限りません(日本に住んでいれば誰でも一つや二つは例を思いつきますよね)。人間にとって火山というのはそういうものです。

おそらく火山学者は誰よりそのことをよく知っています。彼らはその不可能に挑戦し、少しでも火山や地震の被害を減らすことに一生を捧げている人たちです。おそらくまっとうな火山学者なら軽々しく「2週間後に噴火する」などとは言わないでしょう(何度も書きますがハンク・ヘスラー氏もそんなことは言ってません)。最初に「見出しを見た瞬間に疑ってかかるような類の記事」と書いたのはそういう意味です。

ちなみにイエローストーン国立公園の営業時間はここで確認できます。今日も開いてますね;)
ref. Current Conditions – Yellowstone National Park (U.S. National Park Service)

Reference

  1. この手のニュースを見慣れた人なら、また「ロシアの声か…」という感じですね。ロシアの声は少なくともサイエンス関連についてはタブロイドレベルのかなりあやしいニュースを平気で流すメディアです。ここが情報の出どころならまずは疑ってみるのが吉でしょう
  2. どうやらイエローストーンの噴火が近いことを政府は隠蔽しているんだ、という陰謀論があるようです…orz

2014年に地球に接近した小惑星

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ref. OrbView *WebGL版、マウスでぐるぐる回せます

これは、2014年に月の軌道よりも内側を通過した小惑星 36 35 個を全てプロットしたものです。

赤いラインはアポロ群と呼ばれる小惑星群。地球の軌道と交差し、軌道の大半が地球の外側にあるものです。黄色いラインはアテン群。地球の軌道と交差し、軌道の大半が地球の内側にあるもの。そして緑のラインはアモール群。地球の軌道とは交差しないものの地球の軌道に外接しているものです。この3つの小惑星群はNear Earth Object/NEO(地球接近天体、あるいは地球近傍天体)と呼ばれ、地球への衝突のリスクがある天体群として監視の対象になっています。

これらの小惑星は地球に非常に近づくため、接近の前後で軌道が大きく変化しています。ここで表示されているのは接近後の軌道であることに注意してください。

データ元のNASA Near-Earth Object ProgramのWebサイトからテーブルを一部転載しましょう。

Object Close-Approach (CA) Date CA Distance
Nominal
(LD/AU)
CA Distance
Minimum
(LD/AU)
V
relative
(km/s)
H
(mag)
(2014 AF5) 2014-Jan-01 16:13 ± < 00:01 0.3/0.0006 0.2/0.0006 14.62 28.8
(2014 AA) 2014-Jan-02 02:33 ± 02:13 >0.02/0.00004 >0.02/0.00004 36.62 30.9
(2014 AG51) 2014-Jan-09 07:54 ± < 00:01 0.3/0.0009 0.3/0.0009 15.04 29.9
(2014 AK51) 2014-Jan-08 09:09 ± < 00:01 1.0/0.0025 1.0/0.0025 9.28 26.6
(2014 AW32) 2014-Jan-10 21:40 ± < 00:01 0.5/0.0012 0.5/0.0012 12.37 27.5
(2014 DK10) 2014-Feb-21 11:27 ± < 00:01 0.7/0.0017 0.7/0.0017 12.02 27.7
(2014 DX110) 2014-Mar-05 21:00 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 14.85 25.7
(2014 EC) 2014-Mar-06 21:18 ± < 00:01 0.2/0.0004 0.2/0.0004 16.01 28.2
(2014 EF) 2014-Mar-06 03:20 ± < 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 15.09 28.9
(2014 EX24) 2014-Mar-09 14:35 ± 00:02 0.7/0.0018 0.7/0.0018 16.20 28.6
(2014 FT37) 2014-Mar-29 19:45 ± < 00:01 1.0/0.0026 1.0/0.0026 7.51 27.6
(2014 GY44) 2014-Mar-30 00:28 ± 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 12.50 25.4
(2014 GC49) 2014-Apr-03 02:59 ± 00:02 0.3/0.0008 0.3/0.0008 17.08 28.6
(2014 HL129) 2014-May-03 08:14 ± < 00:01 0.8/0.0020 0.8/0.0019 6.37 28.3
(2014 JG55) 2014-May-10 20:18 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 10.47 29.2
(2014 JR24) 2014-May-07 10:45 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 4.63 29.3
(2014 KC45) 2014-May-28 08:10 ± < 00:01 0.2/0.0006 0.2/0.0006 9.42 29.3
(2014 KW76) 2014-May-26 23:29 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 15.13 27.9
(2014 LN17) 2014-Jun-03 12:56 ± 00:02 0.6/0.0014 0.5/0.0014 24.68 27.0
(2014 LY21) 2014-Jun-03 22:27 ± 1_18:48 0.04/0.00011 0.02/0.00006 11.25 29.1
(2014 MH6) 2014-Jun-22 14:05 ± < 00:01 0.6/0.0017 0.6/0.0016 16.21 27.1
(2014 OM207) 2014-Jul-25 06:39 ± < 00:01 0.7/0.0018 0.7/0.0018 8.44 29.1
(2014 OP2) 2014-Jul-24 08:35 ± < 00:01 0.5/0.0013 0.5/0.0013 11.67 29.1
(2014 RA) 2014-Aug-31 23:48 ± < 00:01 0.1/0.0004 0.1/0.0004 13.25 28.9
(2014 RC) 2014-Sep-07 18:02 ± < 00:01 0.1/0.0003 0.1/0.0003 10.95 26.8
(2014 SG1) 2014-Sep-20 14:48 ± < 00:01 0.2/0.0005 0.2/0.0005 13.88 29.1
(2014 TL) 2014-Oct-01 15:59 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 11.13 27.7
(2014 UF56) 2014-Oct-27 21:22 ± < 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 12.07 27.4
(2014 UU56) 2014-Oct-19 11:02 ± 00:04 0.7/0.0017 0.7/0.0017 8.39 28.3
(2014 WE6) 2014-Nov-13 18:06 ± < 00:01 0.6/0.0015 0.6/0.0015 4.79 30.3
(2014 WJ6) 2014-Nov-15 16:12 ± < 00:01 0.9/0.0022 0.9/0.0022 14.64 27.1
(2014 WX202) 2014-Dec-07 20:09 ± < 00:01 1.0/0.0025 1.0/0.0025 1.67 29.6
(2014 XX39) 2014-Dec-03 06:56 ± 02:33 0.02/0.00004 0.02/0.00004 11.91 26.6
(2014 YR14) 2014-Dec-26 09:52 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 15.12 26.1
CA Distance:最接近距離(地心距離)、Nominalは最も可能性の高い距離、Minimumは最も接近した場合の距離。LD:Luna Distance=384,000km, AU:Astronomical distance Unit=150,000,000km。H:絶対等級

ref. NEO Earth Close Approaches/NASA Near-Earth Object Program(Public Domain)

CA Distanceが0.02LD/0.00004AUより小さい小惑星が2つありますが、これは最接近距離が地球半径より小さい、つまり地球に衝突したことを意味します(ただ、2014 XX39については国際天文学連合Miner Planet Centerのデータでは0.000154AUの所を通過したことになっています)。

(2015-01-09 19:00 JST 追記) 2014 XX39はMiner Planet Center、JPLともデータが削除されました。2014 XX39は幻の小惑星ということになりそうです。詳しくは末尾の追記を参照して下さい

もちろんここにリストアップされたのは見つかったものだけです。誰にも知られずに通過したものもあるでしょうし、あるいは誰にも知られずに衝突したものもあるかもしれません。なにしろ地球の7割は海ですし、人の住んでいない場所も沢山ありますからね。

さて、1年で30個超ということは、月軌道の内側に入ってくるような小惑星が少なくとも1ヶ月に2-3個は見つかっていることになります。小惑星の地球への接近というのは決して珍しい現象ではないんです。でも、毎回小惑星が近づくたびに大きく取り上げるメディアがあまり騒がないのはなぜでしょうか?実は、これらの小惑星の多くが通りすぎた後に見つかっています。また、事前に見つかったものでも、発見から最接近まで24時間を切るものが少なくありません。小型の小惑星は暗く、かなり接近しないと見つけられないんです。

通り過ぎた後に見つけても意味が無いじゃないか!と思う向きもあるかもしれませんが、さにあらず。先にも書いたように、こうした小惑星は地球など太陽系を回る惑星の重力の影響を受けて軌道を変化させます。今回はニアミスですみましたが、もしかしたら次は、あるいは次の次は衝突コースに乗っているかもしれません。たとえ通り過ぎた後でも小惑星を発見し、その軌道を精密に測定することはとても重要です。

では、地球に衝突しそうな小惑星を見つけたらどうするのか?結論から言えば、今できるのは屋内退避か避難だけです。小惑星の軌道を逸らせたり破壊したりする技術は様々な方法が提案されていますが、まだ現実的ではありません。将来的にそういった技術で積極的な対応を行うにしても、退避や避難という手段を取るにしても、小惑星を少しでも早く見つけ、正確な軌道と大きさを測ることが必要になります。

近年では、こうした小惑星を見つけるための専用の天文台や地球軌道上から観測する宇宙望遠鏡も設置され、かなり発見数が増えました。また、より発見率を高めるために、太陽を周回する軌道や、地球-太陽の重力が均衡する点(ラグランジュ点)に小惑星観測用の宇宙望遠鏡を設置しようという、Sentinel MissionNEOCamといった計画も提案されています。

地球に接近する小惑星の危険性が認識されるようになったのは90年台の半ば頃。さらにそうした小惑星を監視追跡する世界的なネットワークが構築され始めたのはごくごく最近のことです。気候変動の問題もそうですが、私たちは21世紀に入ってようやく人類共通の課題に取り組む能力と機会を得たのかもしれませんね。

追記: 幻の小惑星2014 XX39

上のリストに掲載されている 2014 XX39 は現在はMiner Planet Center、NASA/JPLのいずれのカタログからも削除されています。どうやらこれは、2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」か、あるいは「はやぶさ2」を惑星間軌道に投入したH-IIAの第3段ではないかとのことです。

天文学者の阿部新助(阿部新之助)先生が、削除されたJPL Small Body Browserの2014 XX39のページの画面キャプチャをTwitterでツイートされていました。

これを見ると、観測されたのは12月6日から7日にかけてです。上のリストを見ると、地球への最接近日(衝突日)は12月3日、つまり発見より前に衝突している、ということになります。もちろんこんなことはありえません。考えられるのは、これが地球から分離した天体、つまり人工物だということです。12月3日に地球を離れた人工物は、はやぶさ2と3機の相乗り衛星、そしてH-IIAの第2段だけです。

明るさから考えて相乗り衛星ではありません。考えられるのは、探査機本体かH-IIAの第2段ですが…

明るさが短時間で変化するのは、その天体がいびつな形をしていて、しかも回転している場合です。制御をされなくなった人工衛星などではよく見られる現象ですね。はやぶさ2は太陽電池を太陽に向けた姿勢を取っているはずなので光度はさほど大きく変化はしないはず。というわけで、どうやら2014 XX39の正体は「H-IIAの第2段」の可能性が高そうです。

Referance

News Clipping 2014-04-01

サイエンス関連のニュースクリップです。行頭の「§」にパーマリンクが設定してあります。※日付に注意

§ CERN to switch to Comic Sans | CERN

CERNは60週年を記念して、公式フォントを「Comic Sans」に切り替えるとのこと。Comic Sansはヒッグス粒子発見の発表でプロジェクトリーダーのファビオラ・ジャノッティ博士が発表資料に使っていたことでも有名。公式発表では博士がビデオで公式採用をアナウンスしている。

§ Astronomy Picture of the Day: Space Station Robot Forgets Key Again

Astronomy Picture of the Day: 船内に入る鍵を忘れて国際宇宙ステーションの窓を叩くロボットアームの写真。今週に入って3回目。船長の若田宇宙飛行士によると、「なぜ毎回鍵を忘れるのかよくわからない。鍵を開けっ放しにすることもできるが、エイリアンが船内に入ってきて冷蔵庫を狙わないかが心配」とのこと。

§ Spaceflight Now | Breaking News | NASA to disclose space shuttle orbiter mix-up

Spaceflight Now: 書類上のミスで1990年台から20年以上にも渡り、スペースシャトルの名前を取り違えていたことが発覚。「アトランティス」は本来であれば「エンデバー」であり、「エンデバー」だと思われていたのは「アトランティス」だったらしい。どうやら、古いNASAのロゴを新しいロゴと書き換える際に取り違えたらしい。現在はそれぞれのシャトルは博物館に収蔵されているが”failure is not option”の精神に則り機体を入れ替える予定で、すでに退役したシャトル輸送用のB747を再組み立てを開始しているとのこと。

§ New fMRI study sheds light on effectiveness of fMRI studies | Pete Etchells | Science | theguardian.com

The Guardian: 科学者達はMRIがどのように動いているのかを明らかにするために、fMRIをfMRIにかけるという実験を行った。fMRIがどのような原理で動いているかは今だよく分かっていない。fMRIという言葉も「functional Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴機能画像法)」だとされているが、これはもっともらしく見せかけるためで、実際には「flashy, Magically Rendered Images(チカチカ光って魔法のように現れる画像)」の略。研究者は6つのfMRIをfMRIにかけスイッチをオンオフしたところ、fMRIの前頭葉にある島皮質という部位が活性化していることが分かった。これはfMRIが初期的な自意識を持っている可能性を示唆している。

§ Scientists discover eighth colour of the rainbow – Science – News – The Independent

Independent: ウエストバージニアの大学の研究チームが虹に8番目の色を発見。スペクトルの”基本色”に新しい色が追加されるのはアイザック・ニュートン以来の快挙。この色にはまだ名前がついていないが、grue(グルー)か bleen(ブリーン)が有力候補とのこと。

§ Scientists Find Imprint of Universe That Existed Before the Big Bang | Science/AAAS | News

Science: TRICEPプロジェクトの研究チームが宇宙背景放射のAF偏光モードの観測を行い、インフレーションを引き起こすinflatonと対になる粒子deflatonの存在を確認。

News Clipping 2013-10-07

サイエンス関連のニュースクリップです。行頭の「§」にパーマリンクが設定してあります。

§ Nobelprize.org

2013年のノーベル賞の発表は10月7日から。今年はヒッグスの存在が確定的になったこともあって物理学賞でヒッグス関連が来そうだとの前評ですが、どうなりますやら…

  • 7日 11:30 CET/18:30 JST 医学・生理学賞
  • 8日 11:45 CET/18:45 JST 物理学賞
  • 9日 11:45 CET/18:45 JST 化学賞

公式サイトでは、発表のストリーミング中継も行われるようです。

§ SLAC National Accelerator Laboratory – Researchers Demonstrate ‘Accelerator on a Chip’

SLAC 国立加速器研究所の研究チームが、マイクロチップサイズの加速器を作ることに成功したというお話。マイクロ波ではなくレーザー光線を使って電子を加速させる仕組み。単純換算で1m辺り300MeVの加速性能を保ち、SLACに設置されているの3kmの線形加速器の10倍の効率になるとのこと。

これがそのチップ。小っさ!

Accelerator on a Chip

(Brad Plummer/SLAC)

仕組みはこんなかんじ。分かるようなわからないような…^^;

「いつか卓上加速器ができるかも」という展望は昔から語られていましたが、いよいよ実現に近づいたということでしょうか?おそらく現時点では大型化できないからマイクロチップサイズで作っているんだとは思いますが、応用が進めばすごい技術になりそうな気もします。一方で、この仕組の動画を見ていると、それってそんな簡単に大型化できるんかいな、という気もしないでもないですね。

原著論文はこちら。

ref. Demonstration of electron acceleration in a laser-driven dielectric microstructure : Nature : Nature Publishing Group

§ Science: Who’s Afraid of Peer Review?

『サイエンス』誌が、架空の研究機関の架空の執筆者によって書かれた高校生程度の化学の知識でダメなものと分かる論文を、304の査読付きのオープンアクセスジャーナルに送ってどうなるかを試す、という実験をしてみたら、半数以上がそのまま掲載されてしまった、というお話 …orz

雑誌のタイトルに”American”や”Europian”とあるのに編集部や取引銀行がぜんぜん違う場所にあるとか、関係者が雑誌の内情を全く知らないなど、ひどい例がいくつもあった一方で、それなりに名の通った雑誌がこの論文を通してしまったりと、この実験の内容がいろいろ波紋を呼んでいるようです。

オープンアクセスジャーナルというのは、だれでも自由に投稿された論文を読むことができる論文誌のこと。従来の論文誌は購読料を支払わなければアブストラクトのみで論文の本文を読むことはできませんでしたが、オープンアクセスジャーナルでは購読料を支払わなくても全文を読むことができます。

こうした雑誌は、学術情報をもっと開かれたものにしようという動きも相まって、近年かなり一般的になりつつあります。 PLoS ONE や BioMedCentral などが有名ですね。Natureの姉妹誌にもScientific Reportsというオープンアクセスジャーナルがあったりします(こちらへの掲載が「Natureに掲載」と間違って報道されたりすることがたまにあったりしますが…)。

こうした雑誌の多くは、補助金や執筆者が支払う掲載料で運営費をまかなっていますが、一方で、掲載しさえすれば掲載料が入るということで、まともな査読などをせずに右から左へ掲載するような粗悪なジャーナルが増えていることも事実。今回の『サイエンス』の”社会実験”はその実態を暴くものといえるかもしれません。

科学論文誌も玉石混交ですし、玉の中にも石が交じることがあります。研究者にとっては(あるいはサイエンスウォッチャーにとっては)当たり前の事実なんですが、一般には余り知られていないことかもしれません。ダメな論文誌は山ほどありますし、有名な論文誌に変な論文が載ることも少なくないんです。

「XX誌に掲載された」という文言はその研究が事実であることを担保しません。著名誌であれば、査読のクオリティも高く、一見して分かるような変な研究ではないと期待できます。また、また出版後も多くの人の目に触れますから、間違いはすぐに指摘されるでしょう。逆に言えば、その程度でしかないということでもあります。なにごとも鵜呑みは禁物。酷いのになると、論文の執筆者と編集委員が同じ人だったりしますからね。1

重要なのは、論文は雑誌に掲載されて終わりではないということです。その研究の重要性が高ければ、追試などが行われるでしょうし、派生する研究などにより論文が引用されていきます。もちろん、反論されて消えていくもの、間違いが修正されて再度投稿されるもの、あるいは全く見向きもされないもの、何年も立ってから価値が再発見されるもの、一つの研究がたどる運命は様々です。雑誌への掲載というのは研究者にとっては大きな目標の一つですが、スタートでもあります。

気楽なサイエンスウォッチャーにとっては、むしろ面白いのはそこからです。

§ arXiv.org: 1 Lunar laser ranging: the millimeter challenge

アポロ計画などで月面に置かれたレーザー反射器をつかって、月との距離を測る実験は繰り返し行われていますが、その精度は機器の向上などによりセンチメートル単位から、ミリメートル単位に入ろうとしています。これは、それを可能にした技術と、それによって何が分かるか、そして今後の展望などをまとめたレビュー。45pもあって読み応えたっぷりです。

月と地球の距離を測るというと、普通は軌道の変化による距離の変化とか、地殻の変動などによる観測地の位置の変化を想像しますが、これくらい精度が上がると、重力定数や相対性理論などの物理定数や物理法則までもが検証できます。

さすがに月面に置かれているのは30年以上も前に置かれた装置のため、年々反射精度が悪くなっていることや、構造上の誤差が無視できないことなどから、将来的には新しい反射器を月面に設置したり、逆に月面からレーザーを発射する装置を設置することなどを検討しているようです。

  1. 6294
  1. まして、だれでも会費を払えば発表できるのに「XX学会で発表された」なんて喧伝しているのは、騙す気満々と思われてもしかたありません。

2013年 米国政府シャットダウンの自然科学分野への影響

2013-10-03 13:00 JST First Post
2013-10-04 10:00 JST USGS、FDAを追記
2013-10-04 10:45 JST MAVENの凍結回避について追記
2013-10-06 02:00 JST NRAOについて追記

2013年9月、米国議会において「医療保険改革法」をめぐって民主党と共和党が対立、新会計年度が始まる10月1日になっても暫定予算が承認されず、行政サービスの一時停止が敢行されました。緊急性の高いものを除き、多くの政府業務が停止、限られた職員で運用を行っている状態です。当然ながら、サイエンスの分野でも少なからず影響が出ています。

多くの研究機関などで業務が停止、日常的な業務や研究活動だけでなくWebサイトやSNSなどを通じた情報提供などが止まっています。これらの機関が運用しているデータベースなども、アクセスできなくなったりデータの更新が行われていないものがあります。また、一部の補助金の交付や承認、プロポーザルや論文などの受付も止まっているようです。こうした機関が主催するイベントなども中止されたり無期限延期になっているものがあります。

シャットダウン中は業務が緊急性の高いものに限定されているため、日常的なメンテナンスなどが止まっている部署も多いようです。そのため、機器などのトラブル対応が遅れ、それらの即応性が求められる業務に支障が出る可能性を指摘する声もあります。また、シャットダウンが明けても、その間に処理すべきだった業務が一斉に動きだし、通常業務が滞る可能性もあるとのことです。

これらの機関は海外の研究者との共同研究や共同プロジェクトを多数持っているため、そうした研究にも支障が出る事も考えられます。シャットダウンが長期化すれば米国内のみならず米国外への影響も大きそうです。

NASA: National Aeronautics and Space Administratio

アメリカ航空宇宙局(NASA)では、国際宇宙ステーションの維持管理など、クリティカルな業務に携わる職員600人を除くほぼすべての職員が自宅待機を命じられています。Webサイトも一部を残し、政府のアナウンスページにリダイレクトされている状態です。TwitterやFaceBookなどのSNSも更新を停止しています。オンラインで公開されていたデータベースなども多くがアクセスできない状態です。

ref. 2013年10月1日 米国政府閉鎖にともない次々と沈黙するNASA関連アカウント – Togetter

ただ、探査機や科学衛星の運用などを行っているジェット推進研究所(JPL)や応用物理研究所(APL)での業務は続けられているようです。JPLはカルフォルニア工科大、APLはジョンズ・ホプキンス大学が委託を受けて運用しているので、予算にバッファがあり運用が継続できているということのようです。ただ、WebサイトやTwitterなどはNASA本部の監督下で行われているので停止されているとのこと。長引くようなら独自の判断で情報発信をするかもしれないとも。

ref.American government shut down, but JPL and APL planetary missions still operating — for now | The Planetary Society

JPLのWebサイトにはアクセスできますが、アップデートされておらずコメントやメッセージにも返信できないというアナウンスが出ています。

ref. Space, Stars, Mars, Earth, Planets and More – NASA Jet Propulsion Laboratory

一方、11月18日に打ち上げが予定されている火星探査機MAVENへの影響が懸念されています。スケジュールには9日間のマージンがあり、打ち上げウィンドウは20日間あるとのことですが、シャットダウンが長引けばトラブル対応などへの余裕がなくなります。最悪打ち上げが中止になると次の打ち上げのチャンスは2年先になります。

ref. Maven mission to Mars focuses on atmosphere | FLORIDA TODAY | floridatoday.com

ref. [Updated] A Government Shutdown Could Delay MAVEN’s Launch to Mars | The Planetary Society

(2013-10-04 10:45 追記) どうやらMAVENはシャットダウンの対象からはずされ、作業が再開されたようです。

ref. Twitter / MAVEN2Mars

ref. NASA’s MAVEN Mission Spared from Shutdown | The Planetary Society

NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration

アメリカ海洋大気庁(NOAA)でも55%の職員が自宅待機、ただし気象観測衛星の運用や天気予報、ハリケーンや地震などの災害対応など緊急性の高い業務は継続して行われているようです。ただ情報発信は停止されていて、TwitterやFacebookのアカウントやWebサイトは閉鎖、サイト上の気象や災害関連のデータベースなどにはアクセスできません。ただし気象情報は NOAA National Weather Service (Wether.gov) で継続して提供されています。また太陽活動を監視している宇宙天気予報のサイト NOAA / NWS Space Weather Prediction Center もサービスを継続しているとのこと。

ref. Government Shutdown Affects Weather, Climate Programs | Climate Central

USGS: U.S. Geological Survey (2013-10-04 追記)

アメリカ地質調査所(USGS)も8600人いる職員のうち緊急対応を行う43人を除くほぼ全員が自宅待機となっています。Webサイトは閉鎖、緊急性の高いサイトのみが運用を続けている状態です。

ただし、Earthquake Hazards Programでは、地震のモニタリングは通常通り行われているが、情報の精度と即応性が落ちる可能性があるとのこと。また、Volcano Hazards Programでは、火山の監視は継続しているが、機器のメンテナンスが行われておらずモニタリング能力が低下する可能性があるとのこと。

CDC: The Centers for Disease Control and Prevention

疫病に対する対策などを行っているアメリカ疾病予防管理センター(CDC)でも68%の職員が自宅待機を命じられ、多くの業務が止まっているようです。緊急時の対応などについては継続して行われていますが、アウトブレイクの兆候を発見するための調査や研究、分析などに支障が出る可能性があるとのこと。

CDCのWebサイトそのものは閲覧できますが、情報の更新が行われず掲載されている情報が最新のものではない可能性があるという警告が掲載されています。

ref. CDC Shutdown: No In-Depth Investigations of Outbreaks – Washington Wire – WSJ

NIH: National Institute of Health

国立衛生研究所(NIH)では73%の職員が自宅待機を命じられているとのこと。NIHでは医療関係の多くの研究が行われていますが、こうした研究は止まっています。Webサイトはアクセスできますが、情報の更新が行われていない旨アナウンスが掲載されています。

NIHの附属病院では治験という形でまだ一般の病院では受けられない治療を行っていますが、新たにこうした治療を受けたいと望む患者は待たされるか他の方法を考えることになるだろうとのこと。ただし、現時点で進行中の治験については継続されているとのこと。

ref. NIH, CDC feeling government shutdown’s effects – CBS News

NIHでは医療関係の研究に対して補助金を交付していますが、これの受付が停止していることで、影響を受けている研究者も少なからずいるようです。

ref. NIH Feels Multiplying Effects of Government Shutdown: Scientific American

FDA: US Food and Drug Administration (2013-10-04 追記)

米食品医薬品局(FDA)では、通常の55%の人員で運用を行っているとのこと。医薬品や食品の安全性の監視について、緊急性の高いもの以外は行われておらず、通常の食品検査や輸入品の監視、企業などの検査、研究調査、地方の公衆衛生サービスへの支援などが止まっているようです。また、食品の安全、栄養、化粧品などに関する活動の支援も行えないとのこと。

ただし、州政府レベルでの監視業務は継続されており、安全性管理が行われていないわけではないようです。また、 United States Department of Agriculture (USDA)による食肉・家禽類関連の検査は継続されているとのこと(これはUSDAの検査なしでは操業を禁じられているため)。また、NOAAが行っている海産物の検査も継続中とのこと。

ref. Government shutdown halts FDA food inspections. Should you worry? – CSMonitor.com

Webサイトは公開されていますが、シャットダウン中は更新されていないという告知が出ています。

NSF: National Science Foundation

アメリカ国立科学財団(NSF)は医療分野を除く科学・工学分野の研究活動の支援を行っている研究費配分機関です。Webサイトは閉鎖、アクセスするとアナウンスのページに飛ばされます。補助金の交付は停止されています。プロポーザルなどの提出については、業務再開後にアナウンスされるとのこと。

ref. Government shutdown closes 3 of 4 National Radio Astronomy Observatories | The Planetary Society</a

NRAO: National Radio Astronomy Observatory (2013-10-06 追記)

米国国立電波天文台も10月4日に閉鎖されたとのこと。10月1日からの数日間は昨年度予算の繰越金で運用されていましたが、それが尽きたという事のようです。NRAOはNSFのファンディングを受けて活動していますが、10月1日よりNSFが活動を停止したため、NRAOもー停止を余儀無くされました。Webサイトも閉鎖され、アナウンスのページへ飛ばされます。

これにより、VLA(映画コンタクトで有名ですね)、VLBI、グリーンバンク電波天文台を含む複数の電波天文台が閉鎖されたとのこと。また、アレシボ天文台も余剰資金が2週間分ほどしかないため、閉鎖が懸念されているようです。国際共同で運用されているALMAはまだ大きな影響はないとのこと。

ref. The Latest Shutdown Information for NIH- and NSF-Funded Researchers (UPDATE) | Science Careers

Reference

United States federal government shutdown of 2013 – Wikipedia, the free encyclopedia

Impact of a government shutdown on federal agencies – The Washington Post

6 Ways Government Shutdown Will Impact Science, Health | LiveScience

U.S. Government Shutdown Looms After Senate Vote | Science/AAAS | News

News Clipping 2013-10-01

サイエンス関連のニュースクリップです。行頭の「§」にパーマリンクが設定してあります。

§ Mashable: Why Everyone F*cking Loves Science — and Elise Andrew

FaceBookアカウント I fucking love science の中の人 Elise Andrew さんの話。サイエンティストではなくサイエンスの”ファン”である彼女が、赴くままにクールだと思うものをポストしていたら、どんどんフォロアが増えてとうとう「いいね」が680万に達したそうな。このスタンスはいいなあ。

“I fucking love science!”

Me, too!

というわけで、Andrewさんに触発されてというわけではありませんが、ぼちぼち再開してみます。まずはこんな感じで覚え書きから。

§ IPCC – Intergovernmental Panel on Climate Change

IPCCの第5次評価報告書の第1作業部会の報告書が公表されました。第1作業部会は気候システム・気候変動についての自然科学的な知見をまとめるセクションです。現時点で最も包括的な気候変動についての調査報告書ということになるでしょう。この報告書だけで2000ページを超える膨大なもの。例年通りなら、いずれ気象庁のサイトに翻訳が上がるはずです。

ref. 気象庁 | IPCC(気候変動に関する政府間パネル)

政策決定者向けのサマリを読む限り、内容的には第4次評価報告書を踏襲したもののようです。

  • 温暖化が起きていることは疑いの余地がない
  • 原因が人為的なものである可能性は極めて高い
  • 今後、気温上昇、中緯度地域および湿潤な熱帯域での降雨の増加、海洋酸性化の進行などがおきる可能性がある
  • 全く対策が取られない場合、今世紀末には最大4.8度の気温上昇、0.82mの海水面上昇がおきる可能性がある

という感じでしょうか。

ざっと見比べたところでは、「気候変動の原因が人為的なものである可能性が極めて高い」の部分が、第4次では”highly likely”となっていたのが”extremely likely”と表現が改められています。逆に、気温上昇と海面上昇の数値は少し下がっていますね。

§ JAXA: シグナス補給船実証機(Orb-D1)ミッション

(2013-09-29)オービタル・サイエンシズ社のシグナス補給船が初めて国際宇宙ステーションに接続されました。18日に打ち上げられ、当初は22日にドッキングする予定でしたが、GPSのトラブルで延期、途中Soyuz TMA-10Mの打ち上げがあったため更に延期され、29日にドッキングが行われました。今回のフライトは実証試験という位置づけですが、ちゃんと補給物資が搭載されています。

ref. Orbital Sciences: Orbital’s Cygnus Spacecraft Successfully Berths With The International Space Station

そうそう、シグナスにはIHI製のスラスタ、GSユアサのリチウムイオン電池(受注は米国子会社)、三菱電機の通信装置が使われています。Space-Xのドラゴンが自社開発がメインなのに対して、シグナスは既存製品を組み合わせることでコストを下げて信頼性を上げるという方針みたいですね。

§ JAXA: 国際宇宙ステーションへのクルー交代/ソユーズ宇宙船交換ミッション

第37次/第38次長期滞在クルーを乗せたSoyuz TMA-10Mが日本時間2013年9月26日午前5時58分にカザフスタンバイコヌール宇宙基地より打ち上げられ、6時間後の日本時間午前11時45分に国際宇宙ステーションにドッキングしました。Soyuzの”特急フライト”はこれで3度めです。
今回のクルーは以下の3人

  • マイケル・ホプキンス
  • オレッグ・コトフ
  • セルゲイ・リザンスキー

彼らは第38次長期滞在クルーのメンバーとして若田光一宇宙飛行士の同僚になる飛行士たちです(若田さんが船長を務めるのは続く第39次です)。

§ Made in space!! I made this dinosaur for my son last … | Pinterest

国際宇宙ステーションに滞在中のカレン・ナイバーグ宇宙飛行士が、ステーション内で要らなくなったものを再利用して作った恐竜のマスコット。外側の布はロシアの宇宙食の内張り、中身は着終わったTシャツから作ったとのこと。かわええ。

Breaking News:アメリカ国家偵察局がNASAに監視衛星のスペアを供与

2012年6月5日、アメリカ国家偵察局がNASAに2機分の監視衛星のスペアをNASAに供与するというニュースが流れてきました。これは4日付けのWashinton PostとNewYork Timesが報じたもので、これを受けてNASAが記者会見を開いたようです。

2紙の記事、およびNASA WatchのTwitterアカウント @NASAWatchでの記者会見の内容をざっくりまとめるとこんな感じ。

  • アメリカ国家偵察局がNASAに2機分の監視衛星のスペアを供与
  • 供与されるのは主鏡と副鏡、鏡筒、ラジエーターなど
  • カメラなどの観測機器、ソーラーパネルや姿勢制御装置などは含まれていない
  • 主鏡直径2.4-meter、ハッブル宇宙望遠鏡の100倍の視野
  • 主鏡はハッブルより軽く、焦点距離はより短い。全体の大きさはハッブルの半分
  • 現在は製造された工場に保管されている
  • 現時点ではNASAではこの件についてはまだ予算化されてない
  • 打ち上げにはアトラスVやファルコン9のような大きなフェアリングを持った打ち上げ機が必要
  • 望遠鏡と通信するための地上施設も必要
  • 計画中のWide Field Infrared Survey Telescope: WFIRSTに使えるかもしれない

WFIRSTは2024年に打ち上げが計画されているダークエナジーや系外惑星の観測を目的とした広視野宇宙望遠鏡。全米評議会(United States National Research Council)で次の10年のトッププライオリティプロジェクトに選出されています。もしこのNROから供与された望遠鏡が使えればもっと早く観測に入れるかもしれないとのこと。

どうやら、この件は2012年6月4-7の日程で行われているNational Academyの天文学・宇宙物理学の委員会で公表されたもののようです。
ref. BPA: Board on Physics and Astronomy

ページ最下段からリンクされた資料のうち “New Developments in Astronomy and Astrophysics”と”Implication of New Developments for the Astronomy and Astrophysics Decadal Survey”が当該プロジェクト関連の資料ですね。

後者の資料中に機体と思しき写真が公開されています。機密が解除されたという割にはあちこち黒塗りですが、確かにハッブルに似た、より全長の短い機体が写っています。

Wikipediaから取得(当該資料から転載されたもの)/Public Domain

識者によれば、おそらくこれはKH-11 Kennan のものだろうとのこと。KH-11は70年代に開発されたキーホールシリーズの一つ、センチメートルオーダーの解像度を持つといわれるスパイ衛星です。


さて、ここからは筆者の推測です(鵜呑みにしちゃダメですよ)。

最大の問題は予算ですね。この緊縮財政のおり、開発費が押さえられるとはいえもう一機宇宙望遠鏡を飛ばすとなるとそれなりの予算が必要です。打ち上げ費用も必要ですし、運用体制も整えなければなりません。供与されるのは筐体と鏡だけですから、使えるものにするためにはさらに開発が必要です。そんな予算どこにあるの?というお話。

WFIRSTプロジェクトで使えるかもという話ですが、WFIRSTは全米研究評議会でトッププライオリティに上げられているとはいえ、当然まだ開発については予算化はされていません。鏡もらったから作るね、とはいかないはずです。

NASAはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の打ち上げを2018年に予定しています。宇宙科学系の予算がかなりそっちに割かれていることを考えると、新たにもう一つ宇宙望遠鏡を上げるというのは予算面での風当たりも強そうです。スケジュールが伸びに伸びてキャンセルの瀬戸際までいってようやく復活したJWSTの予算が切られるなんてことにならないといいんですが…

ちなみに、今回供与された望遠鏡は、広視野の可視光/近赤外線望遠鏡です。サーベイ観測とよばれる広い範囲を観測して面白そうな天体を見つけたり、たくさんの天体をいっぺんに観測して統計的なデータを取ったりといった分野で威力を発揮するはず。その意味では口径の大きな高分解能の望遠鏡で狭い領域を詳しく観測することを目指すJWSTとは相補的な関係です。必ずしもどちらかがあれば、どちらかはいらない、という類のものではないはず。

もう一つの問題は、これがまだ議会の承認を得ていないということ。NASAは国家機関ですから議会の承認なしでは動けません。あげるといわれて、じゃあもらいます、とはいかないはず。宇宙開発に予算を割くことに反対する立場から見れば、議会の承認も得ずに何勝手なことをやってるんだ、というところでしょう。まだ黒塗りの画像が上がってくるところを見ても、安全保障上の問題が全てクリアにはなっていないような印象を受けます。どう転ぶにしてもあちこちに波紋を呼びそうですね。

Referance

太陽を見る時に覚えておいてほしいこと

日食の話をしましょう。2012年5月21日に日本全国で金環日食が見られます。国内で見られる日食としては2009年以来約3年ぶり、これほど広い範囲で見られるのは数百年ぶりの機会です。どこでどんなふうに見られるか、どうやってみたらいいのかについてはあちこちに沢山解説があるのでそちらに譲ります。
ref. 2012年5月21日 金環日食 (国立天文台)
ref. 「金環日食2012」特設サイト (アストロアーツ)

ここでお話したいのは日食の観察の時に気をつけなくちゃいけないことの方です。もう聞き飽きているかもしれませんが、せっかくなので少し違う話をしたいと思います。

日食の解説をしているサイトにも注意事項が沢山乗っていますよね。あれをしちゃダメ、これをしちゃダメ…色々書いてありますが、でもなんでダメなんでしょうか?それは太陽の光と人間の目の性質に深い関係があります。今からするのはそういうお話です。

金環日食と皆既日食

そのまえに、今回おきる金環日食の見え方について少し説明しておきましょう。ご存知の通り日食というのは月が太陽の前を通る現象ですが、金環日食というのは太陽より月の方が微妙に小さい状態のことです。金環日食では太陽は完全には隠れません。太陽観測メガネ越しに見ると、太陽がリング状になります。こんな感じ。

Image: sancho_panza (CC-BY)

一方で月が太陽を完全に覆い隠すのは皆既日食。2009年に日本の南方でおきたのはこちらです。こんな感じです。

Image: Zeinab Salarvand (CC-BY)

金環日食では太陽が完全には隠れないので、皆既日食の時のように食が最大の時でも周りが暗くなったりはしません。人間の目は明るさに順応するので多分知らなければ外にいても日食がおきていることには気付かないでしょう。太陽の周りを覆うコロナも見えませんし、日食中はずっと太陽観測メガネが必要です。前回、2009年の皆既日食の様子を想像していると、たぶんかなり感じが違います。食が最大になったり、コロナが見えなかったりしても、絶対に観測メガネを外しちゃダメです。

なぜ太陽を直接見てはいけないのか

さて、本題に入りましょう。覚えておいて欲しいことは2つ。太陽を見るときに気をつけなければいけないことは、ほぼ全てこの2つがその理由です。

  1. 太陽を見るのは虫眼鏡で光を集めるのと同じ
  2. 太陽は目に見えない光を沢山出している

子供の頃、虫眼鏡で太陽の光を集めて遊んだことがありますよね。黒い紙に光を集めて穴を開けたり燃やしたりしたのを覚えていますか?おおざっぱに言えば太陽を見るというのはあれと同じです。人間の目には水晶体というレンズの役割をする組織があります。人間の目はこの水晶体で目の後ろにある網膜という組織に光を集めることでものを見ています。当然、太陽を見ると水晶体で集められた光が、網膜の上の一点に集まります。小さいとはいえ水晶体は立派なレンズですから、理屈としては虫眼鏡と同じです。

確かに水晶体は小さいですが、太陽の光の強さをバカにしちゃいけません。太陽を直視するとわずか1秒程度でも目の組織が損傷を受けるとも言われています。実際に、日食の観測や宗教的な行事で裸眼で太陽を直視していた人に、視力が低下したり、失明したりという例があるそうです。多くは一時的なものですが、障害が残った例も報告されています1

あちこちで太陽を見るな、と言われているのはこういう理由。太陽の光というのはとても強力なんです。

なぜサングラスじゃダメなの?

とはいえ、人間は強い光を見ると苦痛を感じるようにできているので、かなり無理をしないと何秒も太陽を見ていることは出来ません(やっちゃダメですよ)。普通は眩しくてみていられないんですね。

でも、ここに落とし穴があるんです。先ほどの2つ目の理由を思い出してください。実は太陽は赤外線や紫外線といった目に見えない光も沢山出しています。でも、人間が眩しさを感じるのは可視光と呼ばれる目に見える光だけ、赤外線や紫外線はあまり苦痛を感じません。

よく日食の解説に「日食観測は下敷きやサングラスではなく専用の日食観測メガネを使ってください」と書いてあるのはこれが理由です。下敷きや写真のフィルム、煤をつけたガラスなんかは、可視光は遮りますが赤外線や紫外線は通してしまうんです2 。一見暗くなっているので大丈夫そうですが、太陽の光に対してはザルで水を掬うみたいなものです。穴だらけ。

これが可視光ならば眩しくて目を細めたり、目をそらせたり、目の中の虹彩と呼ばれる組織がきゅっと縮まって入ってくる光を最小限にしたりします。でも、赤外線や紫外線はあまり眩しさを感じさせないので、こういう反応が起きにくいんです。逆に、サングラスや下敷きを使うと視界が暗くなって、瞳が大きく開かれ、苦痛を感じない分長く見られてしまいます。

これが大変危険な状態なのは想像がつきますよね。もし指先が苦痛を感じなければ、火を扱うたびに気づかずに大やけどをしてしまうでしょう。大げさにいえばサングラスや下敷きで太陽を見るというのはそういうことです。

ちょっと気をつけた方がいいのはカメラ用の減光フィルター、あれはカメラのフィルムやセンサー用に作られているので結構紫外線や赤外線を通します。専用品だからといって人間の目に適しているとは限りません。フィルターはちゃんと説明書を読んで適した用途のものを使って下さいね。

というわけで、日食を見るときは必ず太陽観測グラスを使ってください。絶対に裸眼で見ないように3

太陽を写真に撮るときの注意

さて、せっかくの機会だから写真に撮って残したい、と思っている人も多いでしょう。でもこれ、目で見る時より気をつけなくちゃいけないことが沢山あります。

もういちど虫眼鏡の実験を思い出してください。レンズが大きければ大きいほどたくさんの光を一点に集めることができます。たとえば人間の瞳のサイズは5mmくらい、カメラのレンズが50mmだとすれば面積はちょうど100倍。これは100倍たくさんの光を集めることができるということです。

今度は比喩ではなく本当に虫眼鏡で光を集めるのとまったく同じ。光が集まった先に何があるのかよく考えてください。

双眼鏡、望遠鏡、一眼レフやコンパクトデジカメのファインダーなどは絶対に覗いてはいけません。裸眼で見るよりずーーーっとずーっと危険です。望遠鏡やカメラの画角は小さいので、ついファインダーを覗きながら探してしまいそうですが、絶対にやめてください。一瞬でもとても危険です。場合によっては眩しいと感じている暇もないかもしれません。

太陽観測メガネをかけていてもダメです。これ、実はものすごく危ないんです。多くの観測メガネの遮光フィルムは熱に弱い樹脂製です。しかも色は黒。おそらくレンズで集められた太陽の光とその熱で簡単に穴が開いてしまいます。そうなったら裸眼で直接レンズを覗きこむのと同じです。絶対やっちゃダメです。

たとえ穴があかないとしても、観測メガネは裸眼でちょうどいいように作られているので、レンズで集められた光に対してはまるで性能が足りません。なにしろ100倍ですからね。

Image: @ALUMII

日食グラスをレンズの先にあてがうのもおすすめしません。先程も言ったように、日食グラスはせいぜい直径数ミリの人間の瞳のサイズに合わせたものなのでカメラのレンズ越しでは性能が足りませんし、それに万が一ずれたりしたらとても危険です。

じゃあ直接見なければいいかというと、フィルターを付けずにカメラを太陽に向けると、太陽の光はセンサーやシャッターの上に集まります。当然かなりの高温になりますから精密機器は壊れてしまうかもしれません。望遠鏡でもフィルター無しで長時間太陽に向けていると接眼レンズが壊れてしまうことがあります。太陽の光というのはそれぐらい強いんです。

できれば、カメラで太陽を撮影するためのに専用のフィルターがあるので、それを使うことをおすすめします。もちろん、撮影の際には絶対にファインダーを覗かず、液晶画面で画角を決めてください。先ほどの話を少し思い出して下さい。カメラの減光フィルターの中には赤外線や紫外線を通してしまうものがあります。フィルターをつけているからといって、むやみにファインダーを覗かない方がいいです。

そうそう、太陽にカメラを向けるときは、たとえファインダーから目を外した状態でも裸眼で太陽を見ないように気をつけてくださいね。カメラを覗かずにちゃんと太陽にカメラを向けるのはけっこう難しいです。撮影に慣れた人に聞くと影を使ってカメラの向きを決めるのがコツとのこと。三脚に固定し、レンズをまっすぐ太陽に向けるとレンズの影が本体に落ちなくなります。これを利用してカメラの向きを決めるといいそうです。

太陽の撮影はなかなか大変です。機材も色々いりますし、特別なノウハウやテクニックも必要です。カメラでの撮影は慣れた人に任せるのがいいかもしれません。折角のチャンスですから、太陽観測メガネ越しに自分の目で見るのもいいんじゃないでしょうか。

日食メガネを使ってみましょう

さて、太陽観測メガネはもう手に入れましたか?もし手元にあるならば、本番までしまっておいたりしないで予行演習をしましょう。外に出て掛けてみてください。まずはいきなり太陽を見ないで周りを見てみましょう。ちゃんとしたメガネなら晴れている日に外に出てもほとんどまっ暗で何も見えないはずです。

そりゃそうですよね、あれだけ強い太陽の光を直接見ても大丈夫なくらいまで暗くするフィルタですから、普通の風景はぜんぜん見えません。視界もかなり狭いです。かけたまま移動は出来ませんね。転んだりしたらかなり危なそうです。車道や足場が不安定な場所で見るのは止めたほうがいいかもしれません。屋上なんかで見る人は足元に充分気をつけてくださいね。

さて、ここでちょっと困ったことがあります。実際にやってみれば分かりますが、そのままの状態では太陽がどこにあるかわかりません。だからといってメガネを外して太陽を探しちゃダメです。何度も書いている通り裸眼で太陽を見るのは危険です。じゃあどうすればいいでしょうか?たとえばこういうやり方です。

地面に落ちる自分の影を見て下さい。太陽は影が落ちている方角の真反対にいます。そして、あなたの頭とあなたの頭の影を結ぶ線を延長した先に太陽があります。だいたい位置がわかりましたか?では、足元を見ながら自分の影が自分の真後ろに来るように立ちましょう。太陽は正面にあるはずです。まだ顔を上げちゃダメですよ。下を見たまま観測メガネを付けます。そこから観測メガネをしたまま顔を上げれば太陽が視界に入ってくるはずです。慣れれば簡単ですが、ちょっとコツが要りますね。

そうそう太陽観測メガネといっても遮光は完全じゃありません。あまり長時間連続してみないように、長くても2、3分を目安に目を休ませてあげてください。大丈夫、日食とはいえいきなり欠けたりはしません。1、2分休んでも見た目は殆ど変わらないはずです。

さて、長々と書きましたが、まとめればこういうことです。

  • 太陽を見るときは、必ず太陽観測メガネを使ってください
  • たとえ太陽観測メガネを付けていても、カメラのファインダーや双眼鏡を覗いたりしないで下さい
  • 観測や撮影をするときには、太陽を直接見ないように手順などにも十分注意してください

ここまで読んで下さったのなら、これが当たり前だということはもうお分かりですよね。そして、それにちゃんと理由があることも。理由がわかっていれば、何に気をつければいいかもわかるはずです。色々脅し文句を書きましたが、太陽を見るのはなかなか楽しい体験です。ちゃんと観測メガネの使い方がわかっていれば、さほど危険ではありません。またとない機会です、是非楽しんでください。

そうそう日食メガネは捨てないでくださいね。次の日食は随分先ですが、今年の6月6日には金星が太陽の前を通る日面通過という現象もあります。観測メガネがあれば肉眼でも見えるはずです。時々肉眼で見えるほど大きな黒点が出ることもあります。

そういう特別なイベントじゃなくても、たまにメガネを引っ張り出してぼーっと眺めるのもなかなか楽しいです。あそこに見えているのが地球に一番近い恒星です。とても身近な星ですが、なにしろやたらと明るいので直接見る機会はなかなかありませんからね。

さて、後は当日が晴れるのを祈るだけです。天気がいいといいなあ。

追記

これは太陽に向けた双眼鏡の後ろに紙コップを掲げるデモンストレーションです。この感じだとおそらく樹脂製の観測メガネは一瞬ですね。

こちらは倉敷科学館さん制作のビデオ。観測メガネへのテスト映像もありますが、大きめの望遠鏡での実験とはいえ、予想通りの結果ですね。

追記

どうやら遮光効果が不足している太陽観測メガネが販売されているようです。いまいちど購入した製品が安全なものかどうかをチェックすることをお勧めします。

  • 室内の蛍光灯を見て、一見して明るく、形がはっきりと見える製品は避ける
  • 透過率は可視光線で0.003%以下、赤外線で3%以下を目安に
  • LEDライトなどの強い光にかざした時に、ひび割れや穴が確認できるものは避ける

詳しくは下記のサイトなどを参照して下さい。

ref. 2012年金環日食日本委員会
ref. 日食観察&撮影時に「忘れちゃだめ」なこと。 – Togetter

Reference

  1. その時大丈夫でも数時間から数日たってから症状が出る例もあるので、もし異常を感じたらお医者さんにいってくださいね
  2. 昔は太陽観測メガネなんてなかったじゃないか、という方もいらっしゃるかもしれません。おっしゃるとおり、今から思えば随分危ないことをしていたものです。今は日食メガネを使ったほうがいいということで専門家の意見も一致しています。安全に越したことはないですからね
  3. ピンホールカメラの原理を利用して壁面に映したり専用の投影板を使う方法もあります。こちらはより安全ですが、ここでは最も普及していると思われる太陽観測メガネを使う時の注意点について説明します。こうした方法については本稿末尾の参考資料などを参照して下さい。

日本の宇宙開発を変えた一台のキーボード

はやぶさの帰還からちょうど1年たった2011年6月13日、東京国際フォーラムにて、20世紀FOX映画『はやぶさ』の公開を記念したプレスイベントと、期間限定の情報施設「はやぶさi」の内覧会が行われました。

プレスイベントや展示の内容は各メディアやブログですでにたくさん紹介されていますので、ここではちょっと違う話をしましょう。ご紹介したいのは、この「はやぶさi」の展示品の一つです。

はやぶさiの片隅に一台のキーボードが飾られています。栄養ドリンクの箱に支えられた古びたキーボード。始めて見る人は、なんでこんなところにキーボードが?と思うかも知れません。でも実はこれは日本の宇宙開発の歴史に残るキーボードなんです。

名前のラベルからもわかるように、これは当時カメラチーム/広報担当だった寺薗淳也先生が所有されていたもの。「はやぶさ」が小惑星イトカワにタッチダウンしたあの夜、運用室からブログのリアルタイム更新をしていたキーボードです。もちろん当時使われていた本物です。

覚えている人もいるかも知れません。タッチダウンの夜、運用室の様子はネット上にストリーミング配信され、ブログに逐一はやぶさの現状がアップデートされていきました。どんどん近づいていくはやぶさとの距離、運用室のテーブルの上に増えていく栄養ドリンク、タッチダウン、的川先生が配信画面に向けて立てた親指、その後の「セーフホールドモード」の報、… 画面のこちら側の我々は、中継の画面に動きがあるたび、ブログの更新があるたびに、文字通り手に汗を握って推移を見守っていました。

このイトカワへの着陸に先立つ2004年5月はやぶさの地球スィングバイの時にも、中継こそなかったものの、はやぶさが撮影した地球の画像がほとんどタイムラグなしでWebサイトに掲載されていました。いままさにクリティカルな運用を行っているその現場から映像と情報がリアルタイムで届けられる、日本の宇宙開発でこんなことをやったのは、知る限り「はやぶさ」プロジェクトが初めてです。

この中継を担っていたのが、寺薗淳也・齋藤潤先生をはじめとした「はやぶさ」の広報チームでした。最初は内部でも難色を示す声もあったようです。そりゃそうでしょう。何かトラブルがあれば、それがそのまま流れるわけですから… そして残念なことにそれは現実のものとなりました。その経緯はここで詳しく述べるまでもないでしょう。

工学的な偉業として語られる「はやぶさ」ですが、その広報のアクティブさ、自由さはそれまでの日本の宇宙開発の広報を知る人にとっては驚異的な出来事でした。「はやぶさ君の冒険日誌」、「今週のはやぶさ君」、帰還特設サイトTwitterでの情報発信… その広がりとスピードは枚挙にいとまがありません。そしてこの広報スタイルは、あかつき、イカロスチームに継承され、宇宙科学研究所のひいてはJAXAのスタンダードとなりつつあります。

もしあの時、広報チームがこれまで通りのニュースリリースと記者会見による広報活動だけをしていたら、最終的に「はやぶさ」がこれほどまでに人々の関心を引いていたでしょうか?確かに、はやぶさプロジェクトはまれに見るほどドラマティックなミッションでしたし、素晴らしい成果を残しました。でも、それを伝える広報チームの活躍が無ければ、その物語が我々の元にとどくことは無かったのではないかと思います。

先に行われた映画の記者会見の中でJAXA名誉教授の的川泰宣先生がこういうコメントをされていました。

かつてアポロの月への着陸を見守った子供たちがアポロ世代となって、宇宙開発の一翼を担ったように、いま確実に『はやぶさ世代』と言える子供たちが育ちつつある。

テレビ番組や書籍が次々と作られ、今回の記者会見が行われた「はやぶさ」をはじめとして現在複数の映画の企画が進行中です。そして、期間限定とはいえ「はやぶさi」という専用の展示施設まで作られました。こんな探査機は世界中を探してもほかに例がありません。

もし、東京有楽町の「はやぶさi」に行く機会があったら、せひこのキーボードを探してみてください。大丈夫、とても目立つ場所に置いてあります。そうしたら、ちょっと周りを見渡してみてください。このキーボードの上で始まったことが、とうとうこんなところまでやってきました。

Hayabusa Information Center

これは世界に誇るべき、はやぶさプロジェクトのもう一つの成果です。

Reference

ref. はやぶさi – HAYABUSA INFORMATION CENTER

ref. Hayabusa Live » Archive

ref. 青春の方眼紙: 関係者からのメッセージ│はやぶさ、地球へ! 帰還カウントダウン

20世紀FOX 『はやぶさ』 & 「はやぶさi」関連情報

ref. 映画『はやぶさ』公式サイト 10.1 ROADSHOW

ref. 20世紀フォックス主催「はやぶさ」帰還1周年記念イベント速記(未編集につき注意) | 人生ご縁となりゆきで

ref. 文系宇宙工学研究所 「はやぶさ」帰還1周年イベント&はやぶさi

ref. 映画/竹内結子 専門用語に脱帽? 「宇宙って広いんだな」 – cinemacafe.net

ref. 「はやぶさ」の帰還一周年! 記念イベントに映画主演の竹内結子さんが登場- エキサイトニュース

 

Day of Remembrance

1967年1月27日アポロ1号、1986年1月28日スペースシャトル・チャレンジャー、2003年2月1日スペースシャトル・コロンビア、なぜかアメリカの有人宇宙開発の重大事故はこの時期に集中しています。

NASAでは、スペースシャトル・チャレンジャーの事故が起きた今日1月28日を「Day of Remembrance」として、事故で亡くなった宇宙飛行士たちを記念する日としています。

上記3つの事故だけでなく、これまでミッション中に亡くなった宇宙飛行士は18人、テスト中/訓練中に亡くなった宇宙飛行士は12人います。ここに謹んで哀悼の意を表したいと思います。

1961年3月23日 減圧訓練中の火事

  • ヴァレンティン・ボンダレンコ(Valentin Bondarenko) – ソビエト連邦

1964年10月31日 訓練機が墜落

  • セオドア・フレーマン(Theodore Freeman)- アメリカ合衆国

1966年2月28日 訓練機が墜落

  • チャールズ・バセット(Charles Bassett)- アメリカ合衆国
  • エリオット・シー(Elliot See)- アメリカ合衆国

1967年1月27日 アポロ1号 打ち上げリハーサル中に火災

  • ロジャー・チャフィー(Roger Chaffee)- アメリカ合衆国
  • ガス・グリソム(Gus Grissom)- アメリカ合衆国
  • エドワード・ホワイト(Edward White II)- アメリカ合衆国

1967年4月24日 ソユーズ1号 帰還時にパラシュートが開かず

  • ウラジミール・コマロフ (Vladimir Komarov) – ソビエト連邦

1967年10月5日 訓練機が墜落

  • クリフトン・ウィリアムズ(Clifton “C.C.” Williams)- アメリカ合衆国

1968年3月27日 訓練機が墜落

  • ユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)- ソビエト連邦

1971年6月30日  ソユーズ11号 帰還時の減圧事故

  • ゲオルギー・ドブロボルスキー(Georgi Dobrovolski) – ソビエト連邦
  • ビクトル・パツァーエフ(Viktor Patsayev) – ソビエト連邦
  • ウラディスラフ・ボルコフ(Vladislav Volkov) – ソビエト連邦

1986年1月28日  スペースシャトル・チャレンジャー STS-51-L 打ち上げ時に爆発

  • グレッグ・ジャービス(Greg Jarvis) – アメリカ合衆国
  • クリスタ・マコーリフ(Christa McAuliffe)  – アメリカ合衆国
  • ロナルド・マクナイア(Ronald McNair)  – アメリカ合衆国
  • エリソン・オニヅカ(Ellison Onizuka)  – アメリカ合衆国
  • ジュディス・レズニック(Judith Resnik)  – アメリカ合衆国
  • マイケル・J・スミス(Michael J. Smith)  – アメリカ合衆国
  • ディック・スコビー(Dick Scobee)  – アメリカ合衆国

1993年7月11日 救難訓練中に水死

  • セルゲイ・ヴォゾヴィコフ(Sergei Vozovikov)- ロシア

2003年2月1日  スペースシャトル・コロンビア STS-107 帰還時に空中分解

  • マイケル・アンダーソン(Michael P. Anderson) – アメリカ合衆国
  • デイビッド・ブラウン(David M. Brown) – アメリカ合衆国
  • ローレル・クラーク(Laurel B. Clark) – アメリカ合衆国
  • カルパナ・チャウラ(Kalpana Chawla) – アメリカ合衆国
  • リック・ハズバンド(Rick D. Husband) – アメリカ合衆国
  • ウィリアム・マッコール(William McCool) – アメリカ合衆国
  • イアン・ラモン(Ilan Ramon) – イスラエル

2014年10月31日 スペースシップ2 VSSエンタープライズ テスト中に空中分解

  • マイケル・アルズベリー(Michael Alsbury) – アメリカ合衆国

Reference

NASA – Day of Remembrance

List of spaceflight-related accidents and incidents – Wikipedia, the free encyclopedia