Space Shuttle Atlantis STS-135

いよいよ、ラストフライト、30年以上にわたるスペースシャトルプログラム最後の打ち上げです。米国東部夏時間8日午前11時26分(日本時間 2011年7月09日午前00時26分)、ケネディ宇宙センターよりスペースシャトル アトランティス STS-135が打ち上げられます。

 

image: NASA

 

ミッション中随時更新します。

 

スケジュール:米国東部夏時間(日本時間)

  • 打ち上げ: 2011年7月08日11:26 (9日00:26)
  • ISSドッキング: 2011年07月10日 11:10 (11日 00:10)
  • ISS離脱:2011年07月18日 02:00 (18日 15:00)
  • 帰還: 2011年07月20日 07:07 (20日 20:07)

ref.STS-135 Atlantis Mission Timeline : Launch

 

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日本の宇宙開発を変えた一台のキーボード

はやぶさの帰還からちょうど1年たった2011年6月13日、東京国際フォーラムにて、20世紀FOX映画『はやぶさ』の公開を記念したプレスイベントと、期間限定の情報施設「はやぶさi」の内覧会が行われました。

プレスイベントや展示の内容は各メディアやブログですでにたくさん紹介されていますので、ここではちょっと違う話をしましょう。ご紹介したいのは、この「はやぶさi」の展示品の一つです。

はやぶさiの片隅に一台のキーボードが飾られています。栄養ドリンクの箱に支えられた古びたキーボード。始めて見る人は、なんでこんなところにキーボードが?と思うかも知れません。でも実はこれは日本の宇宙開発の歴史に残るキーボードなんです。

名前のラベルからもわかるように、これは当時カメラチーム/広報担当だった寺薗淳也先生が所有されていたもの。「はやぶさ」が小惑星イトカワにタッチダウンしたあの夜、運用室からブログのリアルタイム更新をしていたキーボードです。もちろん当時使われていた本物です。

覚えている人もいるかも知れません。タッチダウンの夜、運用室の様子はネット上にストリーミング配信され、ブログに逐一はやぶさの現状がアップデートされていきました。どんどん近づいていくはやぶさとの距離、運用室のテーブルの上に増えていく栄養ドリンク、タッチダウン、的川先生が配信画面に向けて立てた親指、その後の「セーフホールドモード」の報、… 画面のこちら側の我々は、中継の画面に動きがあるたび、ブログの更新があるたびに、文字通り手に汗を握って推移を見守っていました。

このイトカワへの着陸に先立つ2004年5月はやぶさの地球スィングバイの時にも、中継こそなかったものの、はやぶさが撮影した地球の画像がほとんどタイムラグなしでWebサイトに掲載されていました。いままさにクリティカルな運用を行っているその現場から映像と情報がリアルタイムで届けられる、日本の宇宙開発でこんなことをやったのは、知る限り「はやぶさ」プロジェクトが初めてです。

この中継を担っていたのが、寺薗淳也・齋藤潤先生をはじめとした「はやぶさ」の広報チームでした。最初は内部でも難色を示す声もあったようです。そりゃそうでしょう。何かトラブルがあれば、それがそのまま流れるわけですから… そして残念なことにそれは現実のものとなりました。その経緯はここで詳しく述べるまでもないでしょう。

工学的な偉業として語られる「はやぶさ」ですが、その広報のアクティブさ、自由さはそれまでの日本の宇宙開発の広報を知る人にとっては驚異的な出来事でした。「はやぶさ君の冒険日誌」、「今週のはやぶさ君」、帰還特設サイトTwitterでの情報発信… その広がりとスピードは枚挙にいとまがありません。そしてこの広報スタイルは、あかつき、イカロスチームに継承され、宇宙科学研究所のひいてはJAXAのスタンダードとなりつつあります。

もしあの時、広報チームがこれまで通りのニュースリリースと記者会見による広報活動だけをしていたら、最終的に「はやぶさ」がこれほどまでに人々の関心を引いていたでしょうか?確かに、はやぶさプロジェクトはまれに見るほどドラマティックなミッションでしたし、素晴らしい成果を残しました。でも、それを伝える広報チームの活躍が無ければ、その物語が我々の元にとどくことは無かったのではないかと思います。

先に行われた映画の記者会見の中でJAXA名誉教授の的川泰宣先生がこういうコメントをされていました。

かつてアポロの月への着陸を見守った子供たちがアポロ世代となって、宇宙開発の一翼を担ったように、いま確実に『はやぶさ世代』と言える子供たちが育ちつつある。

テレビ番組や書籍が次々と作られ、今回の記者会見が行われた「はやぶさ」をはじめとして現在複数の映画の企画が進行中です。そして、期間限定とはいえ「はやぶさi」という専用の展示施設まで作られました。こんな探査機は世界中を探してもほかに例がありません。

もし、東京有楽町の「はやぶさi」に行く機会があったら、せひこのキーボードを探してみてください。大丈夫、とても目立つ場所に置いてあります。そうしたら、ちょっと周りを見渡してみてください。このキーボードの上で始まったことが、とうとうこんなところまでやってきました。

Hayabusa Information Center

これは世界に誇るべき、はやぶさプロジェクトのもう一つの成果です。

Reference

ref. はやぶさi – HAYABUSA INFORMATION CENTER

ref. Hayabusa Live » Archive

ref. 青春の方眼紙: 関係者からのメッセージ│はやぶさ、地球へ! 帰還カウントダウン

20世紀FOX 『はやぶさ』 & 「はやぶさi」関連情報

ref. 映画『はやぶさ』公式サイト 10.1 ROADSHOW

ref. 20世紀フォックス主催「はやぶさ」帰還1周年記念イベント速記(未編集につき注意) | 人生ご縁となりゆきで

ref. 文系宇宙工学研究所 「はやぶさ」帰還1周年イベント&はやぶさi

ref. 映画/竹内結子 専門用語に脱帽? 「宇宙って広いんだな」 – cinemacafe.net

ref. 「はやぶさ」の帰還一周年! 記念イベントに映画主演の竹内結子さんが登場- エキサイトニュース

 

Space Shuttle Endeavour STS-134

 

スペースシャトルエンデバーのラストフライト、STS-134国際宇宙ステーション(ISS)の組み立て/補給ミッションに関するまとめ。

(Image: NASA/Public Domain)

 

スケジュール:米国東部夏時間(日本時間)

  • 打ち上げ: 2011年5月16日午前8時56分(16日午後9時56分)
  • ISSドッキング: 2011年5月18日午前5時14分(18日午後6時14分)
  • ISS離脱: 2011年5月29日午後11時55分(16日午後12時55分)
  • 帰還: 2011年6月1日午前2時32分(1日午後3時32分) ※予定

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Day of Remembrance

1967年1月27日アポロ1号、1986年1月28日スペースシャトル・チャレンジャー、2003年2月1日スペースシャトル・コロンビア、なぜかアメリカの有人宇宙開発の重大事故はこの時期に集中しています。

NASAでは、スペースシャトル・チャレンジャーの事故が起きた今日1月28日を「Day of Remembrance」として、事故で亡くなった宇宙飛行士たちを記念する日としています。

上記3つの事故だけでなく、これまでミッション中に亡くなった宇宙飛行士は18人、訓練中に亡くなった宇宙飛行士は11人います。ここに謹んで哀悼の意を表したいと思います。

1961年3月23日 減圧訓練中の火事

  • ヴァレンティン・ボンダレンコ(Valentin Bondarenko) – ソビエト連邦

1964年10月31日 訓練機が墜落

  • セオドア・フレーマン(Theodore Freeman)- アメリカ合衆国

1966年2月28日 訓練機が墜落

  • チャールズ・バセット(Charles Bassett)- アメリカ合衆国
  • エリオット・シー(Elliot See)- アメリカ合衆国

1967年1月27日 アポロ1号 打ち上げリハーサル中に火災

  • ロジャー・チャフィー(Roger Chaffee)- アメリカ合衆国
  • ガス・グリソム(Gus Grissom)- アメリカ合衆国
  • エドワード・ホワイト(Edward White II)- アメリカ合衆国

1967年4月24日 ソユーズ1号 帰還時にパラシュートが開かず

  • ウラジミール・コマロフ (Vladimir Komarov) – ソビエト連邦

1967年10月5日 訓練機が墜落

  • クリフトン・ウィリアムズ(Clifton “C.C.” Williams)- アメリカ合衆国

1968年3月27日 訓練機が墜落

  • ユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)- ソビエト連邦

1971年6月30日  ソユーズ11号 帰還時の減圧事故

  • ゲオルギー・ドブロボルスキー(Georgi Dobrovolski) – ソビエト連邦
  • ビクトル・パツァーエフ(Viktor Patsayev) – ソビエト連邦
  • ウラディスラフ・ボルコフ(Vladislav Volkov) – ソビエト連邦

1986年1月28日  スペースシャトル・チャレンジャー STS-51-L 打ち上げ時に爆発

  • グレッグ・ジャービス(Greg Jarvis) – アメリカ合衆国
  • クリスタ・マコーリフ(Christa McAuliffe)  – アメリカ合衆国
  • ロナルド・マクナイア(Ronald McNair)  – アメリカ合衆国
  • エリソン・オニヅカ(Ellison Onizuka)  – アメリカ合衆国
  • ジュディス・レズニック(Judith Resnik)  – アメリカ合衆国
  • マイケル・J・スミス(Michael J. Smith)  – アメリカ合衆国
  • ディック・スコビー(Dick Scobee)  – アメリカ合衆国

1993年7月11日 救難訓練中に水死

  • セルゲイ・ヴォゾヴィコフ(Sergei Vozovikov)- ロシア

2003年2月1日  スペースシャトル・コロンビア STS-107 帰還時に空中分解

  • マイケル・アンダーソン(Michael P. Anderson) – アメリカ合衆国
  • デイビッド・ブラウン(David M. Brown) – アメリカ合衆国
  • ローレル・クラーク(Laurel B. Clark) – アメリカ合衆国
  • カルパナ・チャウラ(Kalpana Chawla) – アメリカ合衆国
  • リック・ハズバンド(Rick D. Husband) – アメリカ合衆国
  • ウィリアム・マッコール(William McCool) – アメリカ合衆国
  • イアン・ラモン(Ilan Ramon) – イスラエル

Reference

NASA – Day of Remembrance

List of spaceflight-related accidents and incidents – Wikipedia, the free encyclopedia

リンの代わりにヒ素を使って生きるバクテリアを発見

いつの間にか「地球外生命体の発見」ということになっていてずいぶん盛り上がったNASAの発表ですが、実際は「リンの代わりにヒ素を使う生物の発見」というものでした。

ref. NASA-Funded Research Discovers Life Built With Toxic Chemical (NASA)

(なーんだ、がっかり…)

いえいえ、これ、本当にすごいことなんです。リンは、生物の体の中で遺伝情報をつかさどるDNA、体を構成するたんぱく質、エネルギーの代謝を行うATPなど、これがなかったら生き物じゃない、みたいな主要な部分に使われている元素です。これがほかの元素に入れ替わっていた、というのは生物の教科書を書き換えなくちゃいけないほどの大ニュース。

これまで地球の生物は炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、リンを主要な構成元素とすると考えられてきました(もちろんほかの元素も使われていますが、割合はもっと下がります)。今回、この主要元素のうちリンがヒ素で置き換わっている生物が見つかった、ということになります。 リンとヒ素は性質がとてもよく似ていて、もしかしたらこういう生物がいるかもしれないとはいわれていましたが、本当に見つかったの初めて。

普通に考えれば、じゃあほかの元素だって…ということになりますよね。これが今回の発見の一番すごいところ。生命というものの地平線を一気に広げてしまったんです。生命を形づくる基本元素と思われていたものに、地球上ですら例外がありました。まして地球とは全く異なる環境なら、もっと違う組成を持った生物がいても不思議はありません。

今日、世界中の微生物学者の目が変わりました。たぶん、ここから新しい発見がどんどん出てくるでしょう。これはそういう研究です。

GFAJ-1 Image: NASA

これが、今回見つかった「GFAJ-1」という微生物。発見されたのはカリフォルニア州のモノレイク。こんな場所です。

Image: NASA

モノレイクは塩分の濃度が非常に高く、アルカリ性で、ヒ素の濃度も高いことで知られていて、こうした極限環境の生物を研究している研究者にはよく知られた場所。以前にも、この湖でヒ素を光合成の材料に使う生物が見つかったりしています。

今回の研究は、この湖から採取したGFAJ-1を、リンを含まず、ヒ素だけを含む環境で培養してみたら増えた、というもの。リンとヒ素の両方を含む環境の方が増殖が速かったものの、ヒ素を含まない環境ではほとんど増えませんでした。これはGFA-1がリンではなくヒ素を使って増殖しているということを意味しています。実際、GFA-1の体内を調べてみたところ、リンが使われているはずの場所にヒ素が使われていました(ただし、完全にヒ素に入れ替わっているわけではなく、リンも使われていたようです)。

今回の発見は、宇宙生物学の分野だけでなく、生命の起源の議論にも影響を与えるものです。実際、今回の発見をしたFelisa Wolfe-Simonさんは、我々を含むリンを主体とする生物より前に、こうしたヒ素を主体とする生物が生まれていた可能性を指摘しています。

今後、さらに詳しく調査が行われれば、生命の起源の謎がまた一つ解き明かされるかもしれません。

余談

というわけで、予想は悪くない線を行っていましたが、現実の方がさらに予想を上回っていました。Felisa Wolfe-Simon さんの研究からヒ素に注目したのは悪くなかったんですが…

今回、世界中のメディアやブロガーが予想を出していましたが、日本人の宇宙生物学の研究者の方が的中させていました。すごい!

ref. [NASA会見]DNAにヒ素をもつ生物の発見 (むしブロ)

Reference

NASA-Funded Research Discovers Life Built With Toxic Chemical (NASA)

NASAの論文要旨 (日本経済新聞)

Get Your Biology Textbook…and an Eraser! (NASA Astrobiology)

Searching for Alien Life, on Earth (Astrobiology Magazine)

A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus (Science/AAAS )

Arsenic-eating microbe may redefine chemistry of life(Nature News)

砒素で光合成するバクテリア:原始の地球環境を解明する手がかり (WIRED VISION)

[NASA会見]DNAにヒ素をもつ生物の発見 (むしブロ)

NASAが宇宙生物学上の発見について記者会見

News Release

アメリカ東部標準時12月2日午後2時、日本時間翌3日午前4時にNASAが宇宙生物学上の発見に関して記者会見を行う、と発表しました。

NASA Sets News Conference on Astrobiology Discovery; Science Journal Has Embargoed Details Until 2 p.m. EST On Dec. 2

すわ、地球外生命の発見か!と言いたいところですが、多分違います。根拠はリリースの文言。

NASA will hold a news conference at 2 p.m. EST on Thursday, Dec. 2, to discuss an astrobiology finding that will impact the search for evidence of extraterrestrial life. Astrobiology is the study of the origin, evolution, distribution and future of life in the universe.

NASAは、東部標準時12月2日(木)午後2時から、地球外生命が存在する証拠探しに大きなインパクトを与える宇宙生物学上の発見について記者会見を行います。宇宙生物学とは宇宙での生命の誕生、進化、伝播、そして将来についての研究です。

なんだか微妙な表現です。必ずしも宇宙で何かを見つけた、という内容でなくても当てはまりそうです。むしろ、新しい研究手法につながるような発見があった、というように読めますね。

記者会見の内容を勝手に予想

では、どんな発表なんでしょうか?せっかくなので少し予想してみましょうか。ヒントは記者会見に登場するメンバーにありそうです。

Mary Voytek, director, Astrobiology Program, NASA Headquarters, Washington
Felisa Wolfe-Simon, NASA astrobiology research fellow, U.S. Geological Survey, Menlo Park, Calif.
Pamela Conrad, astrobiologist, NASA’s Goddard Space Flight Center, Greenbelt, Md.
Steven Benner, distinguished fellow, Foundation for Applied Molecular Evolution, Gainesville, Fla.
James Elser, professor, Arizona State University, Tempe

上から順番に、NASAの宇宙生物学プログラムの偉い人、酸素や水を使わずに光合成するバクテリアの研究をしている人、火星で生命の兆候を探すための探査機を計画している人、「生命の兆候(バイオマーカー)」を検出する研究をしている人、生物の進化の過程で重要な役割を果たす化学反応を研究している人。

うーん、このメンバーを見ても、地球外生命の兆候発見!みたいな話じゃなさそうですね。

もし、探査機が何か見つけたなら、たぶんそのプロジェクトから人が来るはずです。将来の探査機計画にかかわっている人は複数いますが、既存の探査機の中心メンバーがいないので、そっち方面じゃなさそう。むしろ極限環境で生きる微生物の研究者がずらっと並んでいる、という感じです。

そもそも、宇宙生物学というのは、上のニュースリリースにもあったように、宇宙生物を研究する学問ではなく、地球外の環境でも生物が存在しうるかどうか、を研究する学問のこと。もちろん惑星探査機などでの生命探査も重要ですが、「地球以外の環境でも起こりそうな生物現象を地球上で見つける」という研究が盛んです。今回の発表に出てくるメンバーも、ほぼ全員そういう研究をしている人。今回の発表もそっち方面と考えるのが順当でしょうか。

というわけで、Gecko’s EyesのNASAの発表内容の予想はこんな感じ。

酸素や水を使わず硫化水素や鉄、ヒ素などで光合成する微生物に関する新しい発見があった。これは極限環境微生物を効率よく検出する方法に使える。火星で生命の兆候が見つかるかもしれない。

つまり、リストの2番目、Felisa Wolfe-Simonさんの研究発表が軸になり、その応用や発展をほかのメンバーが紹介する、という内容。 え?つまらない?これはこれで面白い話なんですけどね。いや、ほんとに「地球外生命体を発見!」みたいなニュースだったらもっと楽しいんですが…

なんにしても日本時間3日の朝には答えが分かります。発表をわくわくしながら待ちましょう。

(続き) Gecko’s Eyes » Blog Archive » リンの代わりにヒ素を使って生きるバクテリアを発見

 

Reference

Mary Voytek « Profile « Directory « NASA Astrobiology
http://astrobiology.nasa.gov/directory/profile/4886/mary/voytek/

Dr. Felisa Wolfe-Simon
http://www.ironlisa.com/

Pamela Conrad « Profile « Directory « NASA Astrobiology
http://astrobiology.nasa.gov/directory/profile/201/pamela/conrad/

FFAME.org :: Steven Benner
http://www.ffame.org/people/sbenner.html

James Elser :Faculty: People | ASU School of Life Sciences
http://sols.asu.edu/people/faculty/jelser.php

天空の8の字(その1) – 準天頂衛星「みちびき」の軌道

2010年9月11日、種子島宇宙センターから、日本初の測位衛星「みちびき」が打ち上げられました。みちびきはGPSを補間する衛星で、現在 数十mの誤差があるGPSの測定精度を1m以下まで高めたり、GPSの影になりやすいビルの間や山間部で位置測定をするための実験などを行います。

みちびきは長時間日本の上空に留まる準天頂軌道と呼ばれる特殊な軌道を描きます。日本の上空を通る準天頂軌道は、ちょうど静止軌道を45度傾けて、ちょっと引き伸ばして、ちょっとずらしたような形。こんな感じです。

 

赤い線がみちびき、青い線が静止軌道です(この図は模式的なものです。必ずしも正確な形や比率を表してはいません)。

赤道上の静止衛星は23時間56分で地球を一周します。おなじように、みちびきの軌道も23時間56分で一周です。これは、地球が一回自転するのにかかる時間と同じ。このため、静止衛星はあたかも赤道上の一点に留まっているように見えます。では、みちびきはどうなるでしょうか?単純に考えると、南北を23時間56分で往復しそうな気がしますが、そうはなりません。

Image : GoogleSatTrack / Google

これがみちびきの一日の動きを地球の表面に描いたもの。みちびきは地図の上で非対称の8の字を描きます。なぜ、こんな形になるんでしょうか?理由は2つ。一つはみちびきの軌道が傾いていること、もう一つは楕円軌道を描いていることです。前者で軌道が8の字になり、後者で8の字が非対称に歪みます。

軌道が8の字を描く理由 – 軌道の傾き

まずは8の字になる理由からいきましょう。みちびきは地球を一周する間に南北を往復しますが、それと同時に東西に自転から遅れたり進んだりします。自転から 遅れる→進む→遅れる→進む→遅れるで23時間56分。これと南北の動きが組み合わさると、きれいな8の字になるんです。ではなぜ衛星が地球の動きから進んだり遅れたりするのか?

話を分かりやすくするために、みちびきが円軌道を描いていることにします。この場合、軌道は静止衛星の軌道を傾けたのと同じ軌道になります。みちびきの通り道を地球に投影するとこんな感じ。先ほどと同じく、赤い円がみちびき、青い円が静止軌道=赤道です。

さて、まず地面の動くスピードを考えます。地球は球をしているので、緯度によって一周するのに必要な距離(=経度の線の長さ)が違います。赤道は一周約4万キロありますが、 日本のあたり、緯度35度付近だと、ぐるりは3万3千キロぐらいしかありません。ということは、地面が1時間あたりに進む距離は赤道から離れれば離れるほど遅くなる、ということです。

次は衛星の動きを考えましょう。赤道を横切る時、経度の線(ここでは赤道です)と衛星の進む角度の差は一番大きくなります。ということは、衛星の東西方向の動きは一番小さくなるということです。逆に衛星の緯度が一番高いところでは、ほとんど赤道と平行に動きますから、衛星の東西の動きは一番大きくなります。

ここまでの話を図にまとめると、こんな感じ。

地表は緯度が高くなるほど遅くなり、衛星は緯度が高くなるほど東西方向の動きが速くなる… さて、2つの動きをあわせてみます。ちょっとややこしいですが、上の絵を見ながら動きを想像してみてください。

赤道上からスタートします。赤道の近くではみちびきは赤道に対して斜めに北へ昇っていきます。このあたりでは衛星より地面の方が早いので、衛星は地面に対して徐々に遅れていきます。

赤道上では、地表の速度は時速1673.6km/h、対するみちびきの東西方向の動きは1183.4km/h。

緯度が高くなるにしたがって地面はどんどん遅くなり、衛星は経度の線と平行に近づいて地面に対してどんどん速くなります。ある時点で、地面より衛星のほうが速くなって、衛星は徐々に遅れを取り戻し始めます。そして最高地点で地表を追い抜きます。

最高地点では、地表の速度は、時速1371.1km/h、対するみちびきは1673.6km/h (この値はみちびきが円軌道を描いていると考えたときの数字であることに注意してください。後述しますが、実際にはもう少し遅くなります)。

さて、今度は衛星は南へと下りながら、さっきとは逆のプロセスを繰り返します。緯度が下がるにしたがって、徐々に衛星の東西方向の動きが遅くなり、逆に地面はどんどん速くなります。やがて地面のほうが速くなり、衛星は地面に対して遅れ始めます。

南半球でも同じことが起こります。南に行くに従って、衛星の東西方向の動きが速く、地面が遅くなります。

これが、「みちびき」の軌道が8の字を描く理由です。ただし、軌道が傾いているだけだと、8の字は赤道をはさんで対象形になります。上で示したような非対称の8の字になるには、もう一つの要素が必要になります。

8の字が歪む理由 – 楕円軌道

さて、もう一度最初にあげたみちびきの軌道を見てください。

実際のみちびきの軌道は赤道をはさんだ対称形ではなく、北の方が小さく南が大きな非対称の8の字になっています。これはどうしてでしょうか?これは、みちびきの軌道が円ではなく、楕円をしていることと関係しています。

楕円軌道を巡る衛星の速度は一定ではありません。中心の星に近いところでは速く、遠いところでは遅くなります。

これは高校の地学の授業を受けた人なら知っているはず。そう、有名なケプラーの第2法則です。言葉で書けば「楕円軌道を描く天体が単位時間当たりに描く扇形の面積は同じ」 というもの。上の図でいえば2つの赤い扇形の面積が同じなら、矢印の長さを通り過ぎる時間も同じ、ということになります。中心の星から離れて扇形が細長くなれば、弧の長さは短くなり、速度は遅くなります。逆に中心の星に近づいて扇形が太くなれば、弧の長さは長くなり、速度は速くなります。

みちびきの場合、なるべく長い時間日本の近くに留まるために、楕円の一番地球から遠くなる部分が一番北に来るようになっています。つまり、地上から見ると北に行くほど衛星の動きが遅く、南にいくほど速くなる、ということです。

さて、これを上の軌道が傾いていることによる効果とあわせて考えてみましょう。さきほど、軌道が斜めになっていることにより、緯度が高くなるほど衛星の東西方向の動きは速く、地表は遅くなると書きました。当然、地表の速さは変わりません。楕円軌道の効果は、北半球では衛星の動きをキャンセルして小さくする方向に、南半球ではより大きくする方向に働きます。

つまり、楕円軌道を描いていることで、8の字の上の丸は小さく、下の丸は大きくなるということです。これがみちびきの軌道があんな形をしている理由です。

 

image: Starlit Night

これは、東経135.00、北緯36.66の地点、日本の子午線上にある明石市立天文科学館から見たみちびきの軌道。赤いドットはほぼ一定の時間ごとについています。

みちびきの場合は、8の字の上の小さい円を廻るのに約8時間かかります。もし、同じ軌道に3機衛星を置いて順々にこの小さい円に入るようにしてあげれば、 24時間常に少なくとも1機の衛星がこの小さい円の中にいる、という状態を作ることができます。これが準天頂衛星のしくみ。日本の真上には静止衛星を置く ことは出来ませんが(静止衛星を置けるのは赤道の上だけです)、日本の上空に長く留まる衛星を複数上げてあげれば、あたかも一つの衛星がずーっと日本の上空で 円を描いているように見せかけることが出来る、というわけです。

次回予告

実 は、みちびきの8の字軌道と全く同じような現象が、自然界でも起きています。なにしろ、軌道がある程度傾いていて、楕円軌道を回っていれば、どこかに8の字が隠れている、ということですからね。

この記事で地球が1回自転する時間をしつこく23時間56分と書いていたのが 気になった人がいたかもしれません。1日は24時間じゃなかったっけ?そう1日は24時間ですが、地球の自転周期は23時間56分しかありません。この4 分はどこに行ったのか?次回はこの失われた4分間の話をします。大丈夫、8の字もちゃんと出てきます。

つづく。

Referance

 

 

Space Shuttle Discovery STS-133

米国東部標準時2011年2月24日-3月9日にかけて、スペースシャトルディスカバリーの国際宇宙ステーション(ISS)の組み立て/補給ミッションが行われます。

Photo Credit: NASA(Public Domain)

このエントリはミッション期間中随時更新します→すみません、全然追えていません。後日まとめておきます。

STS-133帰還

STS-133 ディスカバリーはアメリカ東部標準時3月9日、14日間に渡る最後のミッションを終え、地球へと帰還します。

9日の着陸機会は以下の2回、両方ともケネディ宇宙センターへの着陸です。

  • 軌道離脱噴射 10:52:09 EST (0:52 JST) → KSC着陸 11:57:44 EST (1:57 JST)
  • 軌道離脱噴射 12:29:24 EST (2:29 JST) → KSC着陸 13:34:10 EST (3:34 JST)

 

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木星に小惑星がまた衝突?

2010年6月3日、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー(Anthony Wesley)氏が木星の表面で何かが2秒間に渡って発光するのをカメラで捉えました。同時刻、フィリピンの観測家クリストファー・ゴー(Christopher Go)氏も同じ現象を捉え、この現象がウェズリー氏のカメラの中ではなく木星で起きていることが確認されました。どうやらこれは木星に小さな天体が衝突した瞬間だったようです。

Image Credit: Anthony Wesley (Cited from web)

これがアンソニー・ウェスリー氏が撮影した木星表面の発光現象。左上に小さく光っている光点がそれです。たしかに明らかに表面の模様とは違うものが写っています。

さて、このニュース、肝は「また」というところ。木星に小惑星が衝突するのが観測されたのはこれで3回目。最初の観測は1995年のこと。シューメーカーレヴィ9彗星が木星に衝突しました。当時は数百年とも、数千年に一度ともいわれましたが、昨年2009年に木星に小惑星の衝突痕と思しき黒点があるのが発見されました。そして今回の発光現象の発見です。えー?数百年に一度じゃなかったの?

シューメーカー・レヴィ9彗星

はじめて木星に衝突したことが確認されたのは、シューメーカーレヴィ9彗星(Shoemaker-Levy 9)。1993年に発見され、翌年1994年に木星に衝突しました。発見したのはジーン&キャロライン・シューメーカー夫妻とディヴィッド・レヴィの3人。シューメーカーレヴィ9彗星は太陽ではなく木星を2年周期で巡る彗星でしたが、発見後の軌道計算の結果1994年に木星に衝突することが分かり大騒ぎになりました。1994年7月に実際に木星大気に落下。世界中の天文台やハッブル宇宙望遠鏡、木星探査機ガリレオなどによる観測が行われました。衝突の瞬間は地球から見てちょうど裏側だったために見えませんでしたが、木星の地平線越しの光や巨大な衝突痕、爆発に伴うキノコ雲などが観測されています。

Image Credit: NASA/JPL (Public Domain)

木星探査機『ガリレオ』が捉えた衝突時の閃光。どうやら衝突そのものではなく、衝突の瞬間に生じた光が木星の地平線越しに見えたもののようです。

Image Credit: NASA (Public Domain)

ハッブルによって捉えられた、シューメーカー・レヴィ9彗星の衝突痕。木星の縞模様に沿うように黒い痕が点々とついているのが見えます。シューメーカー・レヴィ9彗星は、複数の破片に分かれて衝突したため、このように表面に連続した跡が残りました。

Image Credit: NASA (Public Domain)

こちらもハッブルが捉えた画像。大気の上層部に衝突の際に生じたキノコ雲と思しき半球状の雲が見えます。

この彗星の発見に関してはちょっと面白いエピソードがあるので紹介しておきましょう。発見者の一人であるジーン・シューメーカー氏は今でこそシューメーカーレヴィ9彗星の発見者として有名ですが、元々はクレーターの研究者の第一人者。NASAで宇宙飛行士としてのトレーニングも受けていて、クレーターの形成に詳しい地質学者としてアポロ計画のクルー候補にもなっていました(健康上の理由から最終候補からは外されています)。

実は、シューメーカー氏は「クレーターは小天体の衝突によるものである」「小惑星が地球に衝突することによって気候の急変動が起きる可能性がある」ということを初めて指摘した研究者の一人。今では当然のように受け入れられていますが、当初は彼のこの説に疑いを抱く研究者も少なくありませんでした。この考えが多くの研究者に受け入れられるようになったのは、彼自身が発見したシューメーカーレヴィ9彗星の木星への衝突によってです。世界中の研究者が惑星に彗星が衝突するのをほぼリアルタイムで目撃し、それが惑星の大気に広汎な影響を及ぼすことを目の当たりにしたんです。つまり彼は、自説を裏付けることになる彗星を、自分で発見してしまったというわけです。すげー!

残念ながら、この画期的な発見のわずか4年後、1997年にジーン・シューメーカー氏は自動車事故で亡くなりました。実は彼の遺灰の一部がNASAの月探査機ルナ・プロスペクターに乗せられて月に送られています。

2009年の天体衝突 ― ウェズリー衝突

さて、シューメーカー・レヴィ彗星の衝突は、当時、数百年から数千年に一度というめったに起きない珍しい出来事だといわれていましたが、15年後の2009年7月、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー氏が木星に奇妙な黒い斑点を発見しました。

Image Credit: NASA (Public Domain)

ハッブルによって撮影された2009年の衝突の跡。直径500mほどの天体が衝突したことによるもので、衝突痕は大西洋ぐらいサイズとのこと。シューメーカーレヴィ9彗星の衝突痕にそっくりですが、これは彗星によるものではなく小惑星の衝突によるもののようです。この衝突痕にはシューメーカー・レヴィ9彗星の衝突のときに見られた細かいダストが見られなかったとのこと。

ref. Hubble Images Suggest Rogue Asteroid Smacked Jupiter (HubbleSite)

2010年、木星表面の謎の発光現象

そして今回の発見。2010年6月3日、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー氏、2009年の衝突を発見したのと同一人物、が木星表面で発光現象を目撃し、同じ現象がクリストファー・ゴー氏によっても確認されました。これで3回目。

Video Credit : Anthony Wesley(Cited from web via YouTube )

アンソニー・ウェズリー氏によって2010年6月3日に撮影された衝突の様子。こちらは動画です。左上で2秒間に渡って何かが光っているのが見えます。画面では小さく見えますが、木星のサイズを考えるとかなり大きな爆発が起きているはずです。

専門家による検証の結果は出ていませんが、今回も天体衝突であることはほぼ間違いなさそうです。木星への小天体の衝突がリアルタイムで映像に捕らえられるのは初めてのこと(シューメーカー・レヴィ9彗星の衝突は木星の裏側でした)。

彼らの発見は即座にネットのフォーラムに公開され、案の定話題騒然。惑星の継続的な観測はアマチュア天文家の独壇場(プロの天文学者はあまりこうした継続観測はしません)とはいえ、木星を見ているのは1人や2人じゃありません。ウェズリーさん豪運ですね。

木星は地球を守っている?

ある研究では、直径1.5kmほどの小惑星の木星への衝突は90年~500年に一度ほどの頻度でおきているという試算が出ています。今回観測された2010年の衝突がどれほどのサイズの小天体によって引き起こされたのかはまだ良くわかっていませんが、これほど頻繁に衝突が観測されるということは、木星への天体衝突はこれまで考えられてたよりずっと多いのかもしれません。
ref. Cratering rates in the outer Solar System (ScienceDirect)

実はこの木星への天体衝突、地球に住む我々にとっても他人事ではありません。

ジョージ・ウェザリル(George W. Wetherill)氏は、1994年に、もし太陽系に木星や土星のような巨大惑星がなかったとすると、火星や地球などの内側の惑星に飛来する小天体はずっと多かったかもしれない、とする研究を発表しました。つまり、かなりの数の小天体が木星や土星の巨大な重力によって捉えられたり弾き飛ばされたりして、それ以上内側へ落ちていくことを妨げられているかもしれない、というわけです。もしかすると、木星は我々を小惑星から守る傘なのかもしれません。
ref. Possible consequences of absence of“jupiters”in planetary systems (SpringerLink)

全く反対に、むしろ巨大惑星の存在は地球への隕石の衝突の可能性を増やしている、と考えている天文学者もいます。どうやら、巨大惑星の重力によって軌道を乱される小惑星も少なくないから、一概に守っているとはいえない、ということのようです。上の研究は、地球への隕石衝突は太陽系の最外縁部からやってくる天体によるものとされていた時代の試算です。近年、地球の近くにもけっこうたくさん小天体が漂っていることが分かってきていて、こうした天体の軌道を捻じ曲げることでむしろ木星の存在は脅威になっている可能性がある、とのこと。
ref. Jupiter – friend or foe? I: the asteroids (arXiv)
ref. Jupiter – friend or foe? II: the Centaurs (arXiv)

ジーン・シューメーカー氏が予測したように、これまで地球には幾度となく巨大な隕石が衝突し、そのたびごとに気候の急変が引き起こされてきたと考えられています。こうした衝突がある生物を絶滅に追いやったこともあったでしょうし、逆にライバルを一掃することで別の生物に幸を奏したこともあったかもしれません。どちらにせよ、今我々が見る世界が形作られる上で、小惑星の衝突が大きな役割を果たしていたであろうことは想像に難くありません。そして、木星の存在はその衝突の頻度を左右している可能性があります。

もし、これまで考えられていたより木星への小天体の衝突が頻繁に起きているとすれば、太陽系の形成に関するシナリオを見直さなければならないかもしれません。そして、それは地球の地質学的な歴史を書き換えるかもしれないのです。

Referance

Anthony Wesley Impact on Jupiter, June 3 2010
http://jupiter.samba.org/jupiter/20100603-203129-impact/index.html

YouTube – Asteroid Impact on Jupiter; Anthony Wesley (2010.06.03)
http://www.youtube.com/watch?v=Yo6LHljBKW8

Christopher Go  JUPITER 2010
http://jupiter.cstoneind.com/

Comet Shoemaker-Levy 9 – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Comet_Shoemaker-Levy_9

Galileo Images of Fragment W Impact (NASA/JPL)
http://www2.jpl.nasa.gov/sl9/image237.html

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Sees Comet Fireball on Limb of Jupiter (07/17/1994)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/1994/30/

HubbleSite – NewsCenter – Color Hubble Image of Multiple Comet Impacts on Jupiter (07/22/1994)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/1994/1994/34/

“Asteroids: Deadly Impact” National Geoglaphic 1997 (邦題:『衝突!彗星と小惑星』)

USGS Astrogeology: Eugene M. Shoemaker
http://astrogeology.usgs.gov/About/People/GeneShoemaker/

2009 Jupiter impact event – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/2009_Jupiter_impact_event

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Images Suggest Rogue Asteroid Smacked Jupiter (06/03/2010)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2010/16/full/

A. Sánchez-Lavega. et al. “The impact of a large object with Jupiter in July 2009″ arXiv:1005.2312v1 [astro-ph.EP] 2010
http://arxiv.org/abs/1005.2312

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Captures Rare Jupiter Collision (07/24/2009)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2009/23/

ScienceDirect – Icarus : Cratering rates in the outer Solar System
http://dx.doi.org/10.1016/S0019-1035(03)00048-4

George W. Wetherill “Possible consequences of absence of“jupiters”in planetary systems ”  Astrophysics and Space Science (via SpringerLink)
http://www.springerlink.com/content/n101761085801516/

J. Horner, B. W. Jones “Jupiter – friend or foe? I: the asteroids” arXiv:0806.2795v3 [astro-ph] 2008
http://arxiv.org/abs/0806.2795

Jonti Horner, Barrie W Jones “Jupiter – friend or foe? II: the Centaurs” arXiv:0903.3305v1 [astro-ph.EP] 2009
http://arxiv.org/abs/0903.3305

人工的に合成したゲノムから、バクテリアを作り出すことに成功

2010年5月20日発行の『サイエンス』に、アメリカのクレイグ・ヴェンター研究所(J. Craig Venter Institute)に所属するハミルトン・O・スミス博士(Hamilton O. Smith, M.D.)率いる研究チームが、人工的に合成したゲノムから完全なバクテリアを作り出すことに成功した、という論文が掲載されました。おおお!

ref. Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome (Science)

Credit: J. Craig Venter Institute (Cited from JCVI)

これが今回、人工的に作られたバクテリアのコロニー(着色されています)。コロニーが形成されているということはこのバクテリアが普通の細胞と同じように増殖していることを示しています。

論文のタイトルは控えめな表現ですが、研究所のニュースリリースには、しっかり「人工バクテリア/人工細胞 (Synthetic Bacterial Cell)」という言葉が使われています。人・工・細・胞!なんという心躍る響き。なんとなく、古きよきマッドサイエンスの香りのする言葉ですねえ。

ref. PRESS RELEASE: First Self-Replicating, Synthetic Bacterial Cell Constructed by J. Craig Venter Institute Researchers (JCVI)

ゲノム、というのは生物の持つ全遺伝子情報のこと。親から子へ受け継がれる遺伝子ワンセットのことです。つまり、バクテリアを作るのに必要な全ての遺伝子情報を人工的に合成して、その遺伝子情報からほんとにバクテリアを作り出すことに成功した、ということです。

具体的には、コンピューター上のデジタルデータを元にゲノムの切れ端を化学的に合成、それを何段階も経て全てつなぎ合わせて一本のゲノムとし、それを染色体を取り除いた別のバクテリアの核の中に入れて新しいバクテリアを作ったとのこと。

しかも、その人工ゲノムには遺伝子情報の中に「透かし(water mark)」が埋め込んであって、作られたバクテリアはその透かしを含めてちゃんと増殖することが確認されています。すげえ!

ちなみに、透かしには関係者46人の名前、引用句が3つ、そしてWebからメールを送れるフォームのURLがDNAの配列にコード化されて入っているとのこと。暗号が解けたらそのメールフォームから連絡を、ということだそうな。ちなみに、引用というのは以下の三つ。

“TO LIVE, TO ERR, TO FALL, TO TRIUMPH, TO RECREATE LIFE OUT OF LIFE.” – JAMES JOYCE

“SEE THINGS NOT AS THEY ARE, BUT AS THEY MIGHT BE.” – A quote from the book, “American Prometheus”

“WHAT I CANNOT BUILD, I CANNOT UNDERSTAND.”  – RICHARD FEYNMAN

うーん、なんだかちょっとやりすぎ、という気もしないでもないですねえ。

遺伝子組み換え技術との違いは?

既存の生命の遺伝子を改変して新たな機能や特徴を持った生物を作り出す、ということはすでに当たり前のように行われています。スーパーに行けば「遺伝子組み換え植物を含まない」というラベルを当たり前のように目にしますよね(これだって、考えてみれば凄いことですが)。でも、この遺伝子組み換えは、既存の生物の遺伝子を直接操作して行われるもの。たとえば、ある生物の遺伝子を特定の場所で切り離し、別の生物の遺伝子をつなぎ合わせることで新しい遺伝子を作ります。パッチワークみたいなものですね。

一方今回の研究では、ゲノムそのものがコンピューター上のデータ化された遺伝情報から人工的に合成されました。言ってみれば、コンピューター上でゲノムをデザインし、そのデザインどおりに生命を作り出すことを可能にする技術が生まれた、ということです。上の例で言えば、一から布を織る方法が発見された、ということになるでしょうか。

元になったゲノムが既存のバクテリアのほぼコピーだったり、増殖に別のバクテリアを使っていたりするので、厳密に言えば人工生命の誕生とはいえないかもしれませんが、それでもかなりそれに近い技術であることは確かでしょう。どうやらすぐさま応用が可能、というものではないようですが、遺伝子工学の新しい扉を開く画期的な成果であるのは事実です。

今度こそほんとの人工細胞

実は、今回の発表を行ったクレイグ・ヴェンター研究所の研究チームは、ずいぶん前からこの人工ゲノムによるバクテリアの製作を目標に次々と要素技術をクリアしていました。その意味では、この発表は青天の霹靂でもなんでもなく、いつ可能になるかだけが問題だったともいえます。

彼のチームは、まずあるバクテリアAからゲノムだけを取り出し、別の種類のバクテリアBに注入して、Aの特徴を持ったバクテリアをBの細胞から作り出すことに成功しました。これが2007年。翌年2008年にはフルサイズのゲノムを合成する方法を開発しました。それまでは、ゲノムの一部しか合成できなかったんですが、これらをフルサイズのゲノムまでつなぎ合わせる技術を開発したんです。この2つの技術を組み合わせれば、今回の「人工ゲノムによるバクテリアの作成」が可能になります。

この間、クレイグ・ヴェンター研究所からなにか研究発表があるらしいという噂が流れる度に、すわ人工細胞が完成か?という憶測が飛び交っていました。2008年の発表の時にも、人工生命誕生は時間の問題、なんていう見出しがネットニュースに躍っていました。それから2年、とうとう本当に「人工細胞」の作成に成功したというわけです。

クレイグ・ヴェンター研究所

クレイグ・ヴェンター研究所の創業者、クレイグ・ヴェンター氏は、ヒトゲノムの解析競争で一躍有名になった、セレラジェノミクス社の初代CEO。当時、人の遺伝子情報を一企業が独占して商品として販売する、ということに対するアカデミックな世界からの猛反発がありましたが、その渦中にいた人です(彼の自伝を読むとたぶんに誤解もあるようですが…)。今や、遺伝子関連技術に関して企業利益が優先されることは半ば当たり前になりましたが、その先鞭をつけた人物ともいえるかもしれません。彼の先見性を評価する声は大きいですが、同時に彼の商業主義的な面とちょっと強引なやり方に反感を持つ人も少なくありません。

彼は、セレラジェノミクスを辞した後、自らの研究所であるクレイグヴェンター研究所を設立しました。この研究所は分子生物学の応用面を扱う非営利の研究所。最近はバイオ燃料を効率よく作り出すバクテリアの研究に力を入れているようです。今回の人工細胞の研究もその一連の研究の中から生まれたものとのこと。

確かに凄い研究だけど…

この研究、素人目に見ても実用化すればとんでもなく応用範囲の広い技術です。生物の全ゲノムを読み取ることは、今やごく当たり前の技術になりました。それを利用して、たとえば絶滅してしまった生物のゲノムを推測してコンピューター上に再現する、なんてことも行われています。将来的には、そうしたデータを使って、絶滅してしまった生物や全く新しい生物を作り出せるようになるかもしれません。クレイグ・ヴェンター研究所でも、新薬の研究やバイオ燃料の製造なんかに利用しようと考えているようです。

この発表以来、当然ながら倫理的な側面での懸念が多数寄せられました。神の領域に踏み込む行為だという信条的なものから、バイオテロに使われるのではないか、あるいは意図しない改変が行われる可能性があるのではないか、といった実質的な危険性を指摘するものまで様々。議会も人工的にゲノムを作り出す研究に対して何らかのガイドラインを設けることを検討し始めているようです。

ref. Congress Considers Synthetic Biology Risks, Benefits (ScienceInsider)

ただ逆に言えば、そうした悪用や意図せぬ影響を防ぐ意味でも、この技術によって可能になるコントロールが有効だということも念頭においておくべきかもしれません。こうしたゲノムをプログラミングする技術が進めば、パンデミックやアウトブレイクに対してピンポイントでワクチンなどを製造することが可能になります。バイオテロなどに対抗する手段としても有効でしょう。これまでの遺伝子組み換えよりも遥かに精度が高いわけですから、意図せぬ改変もむしろ減らすことが出来るかもしれません。

でも、コンピューターウィルスみたいに、本物のウィルスとアンチウィルスが日々生み出されて争っている世界、というのはあんまり想像したくないですねえ。

Reference

Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome — Gibson et al., 10.1126/science.1190719 — Science
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1190719

JCVI: PRESS RELEASE: First Self-Replicating, Synthetic Bacterial Cell Constructed by J. Craig Venter Institute Researchers
http://www.jcvi.org/cms/press/press-releases/full-text/article/first-self-replicating-synthetic-bacterial-cell-constructed-by-j-craig-venter-institute-researcher/

JCVI: Research / Projects / First Self-Replicating Synthetic Bacterial Cell / Overview
http://www.jcvi.org/cms/research/projects/first-self-replicating-synthetic-bacterial-cell/overview/

Synthetic Genome Brings New Life to Bacterium — Pennisi 328 (5981): 958 — Science
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/328/5981/958

Synthetic Biology Breakthrough: Your Questions Answered – ScienceNOW
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2010/05/synthetic-biology-answers.html

Congress Considers Synthetic Biology Risks, Benefits – ScienceInsider
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2010/05/congress-considers-synthetic-bio.html