Breaking News:アメリカ国家偵察局がNASAに監視衛星のスペアを供与

2012年6月5日、アメリカ国家偵察局がNASAに2機分の監視衛星のスペアをNASAに供与するというニュースが流れてきました。これは4日付けのWashinton PostとNewYork Timesが報じたもので、これを受けてNASAが記者会見を開いたようです。

2紙の記事、およびNASA WatchのTwitterアカウント @NASAWatchでの記者会見の内容をざっくりまとめるとこんな感じ。

  • アメリカ国家偵察局がNASAに2機分の監視衛星のスペアを供与
  • 供与されるのは主鏡と副鏡、鏡筒、ラジエーターなど
  • カメラなどの観測機器、ソーラーパネルや姿勢制御装置などは含まれていない
  • 主鏡直径2.4-meter、ハッブル宇宙望遠鏡の100倍の視野
  • 主鏡はハッブルより軽く、焦点距離はより短い。全体の大きさはハッブルの半分
  • 現在は製造された工場に保管されている
  • 現時点ではNASAではこの件についてはまだ予算化されてない
  • 打ち上げにはアトラスVやファルコン9のような大きなフェアリングを持った打ち上げ機が必要
  • 望遠鏡と通信するための地上施設も必要
  • 計画中のWide Field Infrared Survey Telescope: WFIRSTに使えるかもしれない

WFIRSTは2024年に打ち上げが計画されているダークエナジーや系外惑星の観測を目的とした広視野宇宙望遠鏡。全米評議会(United States National Research Council)で次の10年のトッププライオリティプロジェクトに選出されています。もしこのNROから供与された望遠鏡が使えればもっと早く観測に入れるかもしれないとのこと。

どうやら、この件は2012年6月4-7の日程で行われているNational Academyの天文学・宇宙物理学の委員会で公表されたもののようです。
ref. BPA: Board on Physics and Astronomy

ページ最下段からリンクされた資料のうち “New Developments in Astronomy and Astrophysics”と”Implication of New Developments for the Astronomy and Astrophysics Decadal Survey”が当該プロジェクト関連の資料ですね。

後者の資料中に機体と思しき写真が公開されています。機密が解除されたという割にはあちこち黒塗りですが、確かにハッブルに似た、より全長の短い機体が写っています。

Wikipediaから取得(当該資料から転載されたもの)/Public Domain

識者によれば、おそらくこれはKH-11 Kennan のものだろうとのこと。KH-11は70年代に開発されたキーホールシリーズの一つ、センチメートルオーダーの解像度を持つといわれるスパイ衛星です。


さて、ここからは筆者の推測です(鵜呑みにしちゃダメですよ)。

最大の問題は予算ですね。この緊縮財政のおり、開発費が押さえられるとはいえもう一機宇宙望遠鏡を飛ばすとなるとそれなりの予算が必要です。打ち上げ費用も必要ですし、運用体制も整えなければなりません。供与されるのは筐体と鏡だけですから、使えるものにするためにはさらに開発が必要です。そんな予算どこにあるの?というお話。

WFIRSTプロジェクトで使えるかもという話ですが、WFIRSTは全米研究評議会でトッププライオリティに上げられているとはいえ、当然まだ開発については予算化はされていません。鏡もらったから作るね、とはいかないはずです。

NASAはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の打ち上げを2018年に予定しています。宇宙科学系の予算がかなりそっちに割かれていることを考えると、新たにもう一つ宇宙望遠鏡を上げるというのは予算面での風当たりも強そうです。スケジュールが伸びに伸びてキャンセルの瀬戸際までいってようやく復活したJWSTの予算が切られるなんてことにならないといいんですが…

ちなみに、今回供与された望遠鏡は、広視野の可視光/近赤外線望遠鏡です。サーベイ観測とよばれる広い範囲を観測して面白そうな天体を見つけたり、たくさんの天体をいっぺんに観測して統計的なデータを取ったりといった分野で威力を発揮するはず。その意味では口径の大きな高分解能の望遠鏡で狭い領域を詳しく観測することを目指すJWSTとは相補的な関係です。必ずしもどちらかがあれば、どちらかはいらない、という類のものではないはず。

もう一つの問題は、これがまだ議会の承認を得ていないということ。NASAは国家機関ですから議会の承認なしでは動けません。あげるといわれて、じゃあもらいます、とはいかないはず。宇宙開発に予算を割くことに反対する立場から見れば、議会の承認も得ずに何勝手なことをやってるんだ、というところでしょう。まだ黒塗りの画像が上がってくるところを見ても、安全保障上の問題が全てクリアにはなっていないような印象を受けます。どう転ぶにしてもあちこちに波紋を呼びそうですね。

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