2014年に地球に接近した小惑星

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ref. OrbView *WebGL版、マウスでぐるぐる回せます

これは、2014年に月の軌道よりも内側を通過した小惑星 36 35 個を全てプロットしたものです。

赤いラインはアポロ群と呼ばれる小惑星群。地球の軌道と交差し、軌道の大半が地球の外側にあるものです。黄色いラインはアテン群。地球の軌道と交差し、軌道の大半が地球の内側にあるもの。そして緑のラインはアモール群。地球の軌道とは交差しないものの地球の軌道に外接しているものです。この3つの小惑星群はNear Earth Object/NEO(地球接近天体、あるいは地球近傍天体)と呼ばれ、地球への衝突のリスクがある天体群として監視の対象になっています。

これらの小惑星は地球に非常に近づくため、接近の前後で軌道が大きく変化しています。ここで表示されているのは接近後の軌道であることに注意してください。

データ元のNASA Near-Earth Object ProgramのWebサイトからテーブルを一部転載しましょう。

Object Close-Approach (CA) Date CA Distance
Nominal
(LD/AU)
CA Distance
Minimum
(LD/AU)
V
relative
(km/s)
H
(mag)
(2014 AF5) 2014-Jan-01 16:13 ± < 00:01 0.3/0.0006 0.2/0.0006 14.62 28.8
(2014 AA) 2014-Jan-02 02:33 ± 02:13 >0.02/0.00004 >0.02/0.00004 36.62 30.9
(2014 AG51) 2014-Jan-09 07:54 ± < 00:01 0.3/0.0009 0.3/0.0009 15.04 29.9
(2014 AK51) 2014-Jan-08 09:09 ± < 00:01 1.0/0.0025 1.0/0.0025 9.28 26.6
(2014 AW32) 2014-Jan-10 21:40 ± < 00:01 0.5/0.0012 0.5/0.0012 12.37 27.5
(2014 DK10) 2014-Feb-21 11:27 ± < 00:01 0.7/0.0017 0.7/0.0017 12.02 27.7
(2014 DX110) 2014-Mar-05 21:00 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 14.85 25.7
(2014 EC) 2014-Mar-06 21:18 ± < 00:01 0.2/0.0004 0.2/0.0004 16.01 28.2
(2014 EF) 2014-Mar-06 03:20 ± < 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 15.09 28.9
(2014 EX24) 2014-Mar-09 14:35 ± 00:02 0.7/0.0018 0.7/0.0018 16.20 28.6
(2014 FT37) 2014-Mar-29 19:45 ± < 00:01 1.0/0.0026 1.0/0.0026 7.51 27.6
(2014 GY44) 2014-Mar-30 00:28 ± 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 12.50 25.4
(2014 GC49) 2014-Apr-03 02:59 ± 00:02 0.3/0.0008 0.3/0.0008 17.08 28.6
(2014 HL129) 2014-May-03 08:14 ± < 00:01 0.8/0.0020 0.8/0.0019 6.37 28.3
(2014 JG55) 2014-May-10 20:18 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 10.47 29.2
(2014 JR24) 2014-May-07 10:45 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 4.63 29.3
(2014 KC45) 2014-May-28 08:10 ± < 00:01 0.2/0.0006 0.2/0.0006 9.42 29.3
(2014 KW76) 2014-May-26 23:29 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 15.13 27.9
(2014 LN17) 2014-Jun-03 12:56 ± 00:02 0.6/0.0014 0.5/0.0014 24.68 27.0
(2014 LY21) 2014-Jun-03 22:27 ± 1_18:48 0.04/0.00011 0.02/0.00006 11.25 29.1
(2014 MH6) 2014-Jun-22 14:05 ± < 00:01 0.6/0.0017 0.6/0.0016 16.21 27.1
(2014 OM207) 2014-Jul-25 06:39 ± < 00:01 0.7/0.0018 0.7/0.0018 8.44 29.1
(2014 OP2) 2014-Jul-24 08:35 ± < 00:01 0.5/0.0013 0.5/0.0013 11.67 29.1
(2014 RA) 2014-Aug-31 23:48 ± < 00:01 0.1/0.0004 0.1/0.0004 13.25 28.9
(2014 RC) 2014-Sep-07 18:02 ± < 00:01 0.1/0.0003 0.1/0.0003 10.95 26.8
(2014 SG1) 2014-Sep-20 14:48 ± < 00:01 0.2/0.0005 0.2/0.0005 13.88 29.1
(2014 TL) 2014-Oct-01 15:59 ± < 00:01 0.3/0.0007 0.3/0.0007 11.13 27.7
(2014 UF56) 2014-Oct-27 21:22 ± < 00:01 0.4/0.0011 0.4/0.0011 12.07 27.4
(2014 UU56) 2014-Oct-19 11:02 ± 00:04 0.7/0.0017 0.7/0.0017 8.39 28.3
(2014 WE6) 2014-Nov-13 18:06 ± < 00:01 0.6/0.0015 0.6/0.0015 4.79 30.3
(2014 WJ6) 2014-Nov-15 16:12 ± < 00:01 0.9/0.0022 0.9/0.0022 14.64 27.1
(2014 WX202) 2014-Dec-07 20:09 ± < 00:01 1.0/0.0025 1.0/0.0025 1.67 29.6
(2014 XX39) 2014-Dec-03 06:56 ± 02:33 0.02/0.00004 0.02/0.00004 11.91 26.6
(2014 YR14) 2014-Dec-26 09:52 ± < 00:01 0.9/0.0023 0.9/0.0023 15.12 26.1
CA Distance:最接近距離(地心距離)、Nominalは最も可能性の高い距離、Minimumは最も接近した場合の距離。LD:Luna Distance=384,000km, AU:Astronomical distance Unit=150,000,000km。H:絶対等級

ref. NEO Earth Close Approaches/NASA Near-Earth Object Program(Public Domain)

CA Distanceが0.02LD/0.00004AUより小さい小惑星が2つありますが、これは最接近距離が地球半径より小さい、つまり地球に衝突したことを意味します(ただ、2014 XX39については国際天文学連合Miner Planet Centerのデータでは0.000154AUの所を通過したことになっています)。

(2015-01-09 19:00 JST 追記) 2014 XX39はMiner Planet Center、JPLともデータが削除されました。2014 XX39は幻の小惑星ということになりそうです。詳しくは末尾の追記を参照して下さい

もちろんここにリストアップされたのは見つかったものだけです。誰にも知られずに通過したものもあるでしょうし、あるいは誰にも知られずに衝突したものもあるかもしれません。なにしろ地球の7割は海ですし、人の住んでいない場所も沢山ありますからね。

さて、1年で30個超ということは、月軌道の内側に入ってくるような小惑星が少なくとも1ヶ月に2-3個は見つかっていることになります。小惑星の地球への接近というのは決して珍しい現象ではないんです。でも、毎回小惑星が近づくたびに大きく取り上げるメディアがあまり騒がないのはなぜでしょうか?実は、これらの小惑星の多くが通りすぎた後に見つかっています。また、事前に見つかったものでも、発見から最接近まで24時間を切るものが少なくありません。小型の小惑星は暗く、かなり接近しないと見つけられないんです。

通り過ぎた後に見つけても意味が無いじゃないか!と思う向きもあるかもしれませんが、さにあらず。先にも書いたように、こうした小惑星は地球など太陽系を回る惑星の重力の影響を受けて軌道を変化させます。今回はニアミスですみましたが、もしかしたら次は、あるいは次の次は衝突コースに乗っているかもしれません。たとえ通り過ぎた後でも小惑星を発見し、その軌道を精密に測定することはとても重要です。

では、地球に衝突しそうな小惑星を見つけたらどうするのか?結論から言えば、今できるのは屋内退避か避難だけです。小惑星の軌道を逸らせたり破壊したりする技術は様々な方法が提案されていますが、まだ現実的ではありません。将来的にそういった技術で積極的な対応を行うにしても、退避や避難という手段を取るにしても、小惑星を少しでも早く見つけ、正確な軌道と大きさを測ることが必要になります。

近年では、こうした小惑星を見つけるための専用の天文台や地球軌道上から観測する宇宙望遠鏡も設置され、かなり発見数が増えました。また、より発見率を高めるために、太陽を周回する軌道や、地球-太陽の重力が均衡する点(ラグランジュ点)に小惑星観測用の宇宙望遠鏡を設置しようという、Sentinel MissionNEOCamといった計画も提案されています。

地球に接近する小惑星の危険性が認識されるようになったのは90年台の半ば頃。さらにそうした小惑星を監視追跡する世界的なネットワークが構築され始めたのはごくごく最近のことです。気候変動の問題もそうですが、私たちは21世紀に入ってようやく人類共通の課題に取り組む能力と機会を得たのかもしれませんね。

追記: 幻の小惑星2014 XX39

上のリストに掲載されている 2014 XX39 は現在はMiner Planet Center、NASA/JPLのいずれのカタログからも削除されています。どうやらこれは、2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」か、あるいは「はやぶさ2」を惑星間軌道に投入したH-IIAの第3段ではないかとのことです。

天文学者の阿部新助(阿部新之助)先生が、削除されたJPL Small Body Browserの2014 XX39のページの画面キャプチャをTwitterでツイートされていました。

これを見ると、観測されたのは12月6日から7日にかけてです。上のリストを見ると、地球への最接近日(衝突日)は12月3日、つまり発見より前に衝突している、ということになります。もちろんこんなことはありえません。考えられるのは、これが地球から分離した天体、つまり人工物だということです。12月3日に地球を離れた人工物は、はやぶさ2と3機の相乗り衛星、そしてH-IIAの第2段だけです。

明るさから考えて相乗り衛星ではありません。考えられるのは、探査機本体かH-IIAの第2段ですが…

明るさが短時間で変化するのは、その天体がいびつな形をしていて、しかも回転している場合です。制御をされなくなった人工衛星などではよく見られる現象ですね。はやぶさ2は太陽電池を太陽に向けた姿勢を取っているはずなので光度はさほど大きく変化はしないはず。というわけで、どうやら2014 XX39の正体は「H-IIAの第2段」の可能性が高そうです。

Referance

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