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イエローストーン国立公園の火山が2週間以内に噴火する? → しません

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The Grand Prismatic Spring in Yellowstone National Park
Jim Peaco, National Park Service(Public Domain)

イエローストーン国立公園の火山が2週間以内に噴火するかもしれない、というニュースが話題になっていました。見出しを見た瞬間に疑ってかかるような類の記事ですが、信じている人も少なからずいるようなので少し調べてみました。

イエローストーンの巨大火山 2週間以内に噴火の恐れ – News – サイエンス – The Voice of Russia

これは、イエローストーン国立公園の下にある巨大火山が2週間以内に噴火する恐れがあると、同国立公園所属の地質学者ハンク・ヘスラー氏が発表した、というニュース。結論から言えばデマです。少なくともハンク・へスラー氏はそんなことは言っていません1

ちなみに、上記記事にも引用されている上の写真は「グランド・プリズマティック・スプリング」、イエローストーン国立公園の観光名所の一つで、ただの温泉です。今回の話とはほとんど関係ありません。

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さて、あちこちのニュースサイトで話題になっていますが、おそらく火元はここです。ただし、この記事そのものはまっとうな火山についての記事でデマではありません。

Will the Yellowstone Volcano Erupt?: KSFY

これはABCニュースグループのKSFY Televisionが29日に放映したイエローストーンの火山活動についてのレポートです。内容的には「イエローストーンは近い将来噴火するかもしれないし、しないかもしれない。はっきりしたことは分からないが、もし噴火したら大変なことになるかもしれない」というこの手のレポートとしてはごくごく一般的なもの。ここに噂のHank Heaslerさんが登場してインタビューに答えています。

ヘスラー氏のインタビューの内容もイエローストーンで起きている地震や火山活動についてのごく普通の説明です。ただ、その中で彼は噴火の可能性について「2週間」という表現を使っていました。問題の箇所はここ。

Researchers like Hank who study both seismic and volcanic activity here at Yellowstone say they are fairly certain that there will be no type of volcanic eruption here in the foreseeable future. But then we asked Hank to define “foreseeable future”.

“Now what do we mean by foreseeable future? I would say, you know a couple of weeks, and that’s what I would say with certainty.”

ハンクのようなイエローストーンで火山や地震活動について研究している研究者は、こうした噴火(破滅的な大噴火)が、近い将来起きることはないだろうと言っています。しかし、我々がハンクに「近い将来」を定義してくれと問うと、彼はこう答えました。

「近い将来がどれくらいのことを意味しているかって?そうだな、2週間、それくらいなら確実に無いといえるだろうね」

どう見てもこれは「いつ起きるかははっきり予測できない」という比喩表現ですが、これを陰謀論を信奉する人たちが、2週間はなにもない、ということは2週間後に何かあるんだ!と騒ぎ出した、というのが真相のようです orz…

あまりそういうサイトのPVを増やしたくないのでリンクはしませんが、この記事を引きながら2週間後が危ないと主張しているのは、普段から「UFOが!」とか「政府の陰謀が!」とか言っている陰謀論系のブログやYoutuberばかりです2。このヘスラー氏のコメントを曲解する以上のソースを提示しているものはありません。とても信頼に足る情報とはいえませんね。

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さて、じゃあ実際のところどうなんでしょう?イエローストーンは噴火するんでしょうか?結論から言えば、分かりません。

カルデラ破局噴火と呼ばれる、地球全体の気候に影響を与えるような巨大噴火が起きうる場所として、イエローストーン国立公園が上がっているのは事実です。イエローストーンは、約220万年前、約130万年前、64万年前の3回こうした大噴火を起こしたことが分かっており、周期から考えても次がいつ起きてもおかしくありません。ただし、それは数千年、数万年という時間軸の話です。

一方で、近年イエローストーンの地質的な活動が活発になってきているのも事実のようです。今世紀に入ってから、地面か隆起したり、池が干上がったり、蒸気の噴出が増えたりといった現象がおきているとのこと。やっぱり!と言いたいところですが、これを新たな巨大噴火と直接結びつけるのはあまりに早計です。かたや数万年単位、かたや数年単位。誤差のレベルというのも気がひけるほどスケールが違う話です。

我々は今目の前で起きていることが、「平穏時のちょっとした変動」なのか「新たな破局噴火の前兆」なのかを見分ける術を持っていません。記事の中で研究者が言っているのように、2週間後に起きるかもしれませんし、1万年このままかもしれません。どんな火山にも噴火の可能性があり、言えるのは今活動が活発なのか穏やかなのかだけです。穏やかだからといって噴火しないとは限りませんし、活動的だからといってすぐに大噴火するとも限りません(日本に住んでいれば誰でも一つや二つは例を思いつきますよね)。人間にとって火山というのはそういうものです。

おそらく火山学者は誰よりそのことをよく知っています。彼らはその不可能に挑戦し、少しでも火山や地震の被害を減らすことに一生を捧げている人たちです。おそらくまっとうな火山学者なら軽々しく「2週間後に噴火する」などとは言わないでしょう(何度も書きますがハンク・ヘスラー氏もそんなことは言ってません)。最初に「見出しを見た瞬間に疑ってかかるような類の記事」と書いたのはそういう意味です。

ちなみにイエローストーン国立公園の営業時間はここで確認できます。今日も開いてますね;)
ref. Current Conditions – Yellowstone National Park (U.S. National Park Service)

Reference

  1. この手のニュースを見慣れた人なら、また「ロシアの声か…」という感じですね。ロシアの声は少なくともサイエンス関連についてはタブロイドレベルのかなりあやしいニュースを平気で流すメディアです。ここが情報の出どころならまずは疑ってみるのが吉でしょう
  2. どうやらイエローストーンの噴火が近いことを政府は隠蔽しているんだ、という陰謀論があるようです…orz