Archive for the ‘Planetary Science’ category

NASAが宇宙生物学上の発見について記者会見

News Release

アメリカ東部標準時12月2日午後2時、日本時間翌3日午前4時にNASAが宇宙生物学上の発見に関して記者会見を行う、と発表しました。

NASA Sets News Conference on Astrobiology Discovery; Science Journal Has Embargoed Details Until 2 p.m. EST On Dec. 2

すわ、地球外生命の発見か!と言いたいところですが、多分違います。根拠はリリースの文言。

NASA will hold a news conference at 2 p.m. EST on Thursday, Dec. 2, to discuss an astrobiology finding that will impact the search for evidence of extraterrestrial life. Astrobiology is the study of the origin, evolution, distribution and future of life in the universe.

NASAは、東部標準時12月2日(木)午後2時から、地球外生命が存在する証拠探しに大きなインパクトを与える宇宙生物学上の発見について記者会見を行います。宇宙生物学とは宇宙での生命の誕生、進化、伝播、そして将来についての研究です。

なんだか微妙な表現です。必ずしも宇宙で何かを見つけた、という内容でなくても当てはまりそうです。むしろ、新しい研究手法につながるような発見があった、というように読めますね。

記者会見の内容を勝手に予想

では、どんな発表なんでしょうか?せっかくなので少し予想してみましょうか。ヒントは記者会見に登場するメンバーにありそうです。

Mary Voytek, director, Astrobiology Program, NASA Headquarters, Washington
Felisa Wolfe-Simon, NASA astrobiology research fellow, U.S. Geological Survey, Menlo Park, Calif.
Pamela Conrad, astrobiologist, NASA’s Goddard Space Flight Center, Greenbelt, Md.
Steven Benner, distinguished fellow, Foundation for Applied Molecular Evolution, Gainesville, Fla.
James Elser, professor, Arizona State University, Tempe

上から順番に、NASAの宇宙生物学プログラムの偉い人、酸素や水を使わずに光合成するバクテリアの研究をしている人、火星で生命の兆候を探すための探査機を計画している人、「生命の兆候(バイオマーカー)」を検出する研究をしている人、生物の進化の過程で重要な役割を果たす化学反応を研究している人。

うーん、このメンバーを見ても、地球外生命の兆候発見!みたいな話じゃなさそうですね。

もし、探査機が何か見つけたなら、たぶんそのプロジェクトから人が来るはずです。将来の探査機計画にかかわっている人は複数いますが、既存の探査機の中心メンバーがいないので、そっち方面じゃなさそう。むしろ極限環境で生きる微生物の研究者がずらっと並んでいる、という感じです。

そもそも、宇宙生物学というのは、上のニュースリリースにもあったように、宇宙生物を研究する学問ではなく、地球外の環境でも生物が存在しうるかどうか、を研究する学問のこと。もちろん惑星探査機などでの生命探査も重要ですが、「地球以外の環境でも起こりそうな生物現象を地球上で見つける」という研究が盛んです。今回の発表に出てくるメンバーも、ほぼ全員そういう研究をしている人。今回の発表もそっち方面と考えるのが順当でしょうか。

というわけで、Gecko’s EyesのNASAの発表内容の予想はこんな感じ。

酸素や水を使わず硫化水素や鉄、ヒ素などで光合成する微生物に関する新しい発見があった。これは極限環境微生物を効率よく検出する方法に使える。火星で生命の兆候が見つかるかもしれない。

つまり、リストの2番目、Felisa Wolfe-Simonさんの研究発表が軸になり、その応用や発展をほかのメンバーが紹介する、という内容。 え?つまらない?これはこれで面白い話なんですけどね。いや、ほんとに「地球外生命体を発見!」みたいなニュースだったらもっと楽しいんですが…

なんにしても日本時間3日の朝には答えが分かります。発表をわくわくしながら待ちましょう。

(続き) Gecko’s Eyes » Blog Archive » リンの代わりにヒ素を使って生きるバクテリアを発見

 

Reference

Mary Voytek « Profile « Directory « NASA Astrobiology
http://astrobiology.nasa.gov/directory/profile/4886/mary/voytek/

Dr. Felisa Wolfe-Simon
http://www.ironlisa.com/

Pamela Conrad « Profile « Directory « NASA Astrobiology
http://astrobiology.nasa.gov/directory/profile/201/pamela/conrad/

FFAME.org :: Steven Benner
http://www.ffame.org/people/sbenner.html

James Elser :Faculty: People | ASU School of Life Sciences
http://sols.asu.edu/people/faculty/jelser.php

木星に小惑星がまた衝突?

2010年6月3日、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー(Anthony Wesley)氏が木星の表面で何かが2秒間に渡って発光するのをカメラで捉えました。同時刻、フィリピンの観測家クリストファー・ゴー(Christopher Go)氏も同じ現象を捉え、この現象がウェズリー氏のカメラの中ではなく木星で起きていることが確認されました。どうやらこれは木星に小さな天体が衝突した瞬間だったようです。

Image Credit: Anthony Wesley (Cited from web)

これがアンソニー・ウェスリー氏が撮影した木星表面の発光現象。左上に小さく光っている光点がそれです。たしかに明らかに表面の模様とは違うものが写っています。

さて、このニュース、肝は「また」というところ。木星に小惑星が衝突するのが観測されたのはこれで3回目。最初の観測は1995年のこと。シューメーカーレヴィ9彗星が木星に衝突しました。当時は数百年とも、数千年に一度ともいわれましたが、昨年2009年に木星に小惑星の衝突痕と思しき黒点があるのが発見されました。そして今回の発光現象の発見です。えー?数百年に一度じゃなかったの?

シューメーカー・レヴィ9彗星

はじめて木星に衝突したことが確認されたのは、シューメーカーレヴィ9彗星(Shoemaker-Levy 9)。1993年に発見され、翌年1994年に木星に衝突しました。発見したのはジーン&キャロライン・シューメーカー夫妻とディヴィッド・レヴィの3人。シューメーカーレヴィ9彗星は太陽ではなく木星を2年周期で巡る彗星でしたが、発見後の軌道計算の結果1994年に木星に衝突することが分かり大騒ぎになりました。1994年7月に実際に木星大気に落下。世界中の天文台やハッブル宇宙望遠鏡、木星探査機ガリレオなどによる観測が行われました。衝突の瞬間は地球から見てちょうど裏側だったために見えませんでしたが、木星の地平線越しの光や巨大な衝突痕、爆発に伴うキノコ雲などが観測されています。

Image Credit: NASA/JPL (Public Domain)

木星探査機『ガリレオ』が捉えた衝突時の閃光。どうやら衝突そのものではなく、衝突の瞬間に生じた光が木星の地平線越しに見えたもののようです。

Image Credit: NASA (Public Domain)

ハッブルによって捉えられた、シューメーカー・レヴィ9彗星の衝突痕。木星の縞模様に沿うように黒い痕が点々とついているのが見えます。シューメーカー・レヴィ9彗星は、複数の破片に分かれて衝突したため、このように表面に連続した跡が残りました。

Image Credit: NASA (Public Domain)

こちらもハッブルが捉えた画像。大気の上層部に衝突の際に生じたキノコ雲と思しき半球状の雲が見えます。

この彗星の発見に関してはちょっと面白いエピソードがあるので紹介しておきましょう。発見者の一人であるジーン・シューメーカー氏は今でこそシューメーカーレヴィ9彗星の発見者として有名ですが、元々はクレーターの研究者の第一人者。NASAで宇宙飛行士としてのトレーニングも受けていて、クレーターの形成に詳しい地質学者としてアポロ計画のクルー候補にもなっていました(健康上の理由から最終候補からは外されています)。

実は、シューメーカー氏は「クレーターは小天体の衝突によるものである」「小惑星が地球に衝突することによって気候の急変動が起きる可能性がある」ということを初めて指摘した研究者の一人。今では当然のように受け入れられていますが、当初は彼のこの説に疑いを抱く研究者も少なくありませんでした。この考えが多くの研究者に受け入れられるようになったのは、彼自身が発見したシューメーカーレヴィ9彗星の木星への衝突によってです。世界中の研究者が惑星に彗星が衝突するのをほぼリアルタイムで目撃し、それが惑星の大気に広汎な影響を及ぼすことを目の当たりにしたんです。つまり彼は、自説を裏付けることになる彗星を、自分で発見してしまったというわけです。すげー!

残念ながら、この画期的な発見のわずか4年後、1997年にジーン・シューメーカー氏は自動車事故で亡くなりました。実は彼の遺灰の一部がNASAの月探査機ルナ・プロスペクターに乗せられて月に送られています。

2009年の天体衝突 ― ウェズリー衝突

さて、シューメーカー・レヴィ彗星の衝突は、当時、数百年から数千年に一度というめったに起きない珍しい出来事だといわれていましたが、15年後の2009年7月、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー氏が木星に奇妙な黒い斑点を発見しました。

Image Credit: NASA (Public Domain)

ハッブルによって撮影された2009年の衝突の跡。直径500mほどの天体が衝突したことによるもので、衝突痕は大西洋ぐらいサイズとのこと。シューメーカーレヴィ9彗星の衝突痕にそっくりですが、これは彗星によるものではなく小惑星の衝突によるもののようです。この衝突痕にはシューメーカー・レヴィ9彗星の衝突のときに見られた細かいダストが見られなかったとのこと。

ref. Hubble Images Suggest Rogue Asteroid Smacked Jupiter (HubbleSite)

2010年、木星表面の謎の発光現象

そして今回の発見。2010年6月3日、オーストラリアのアマチュア天文家アンソニー・ウェズリー氏、2009年の衝突を発見したのと同一人物、が木星表面で発光現象を目撃し、同じ現象がクリストファー・ゴー氏によっても確認されました。これで3回目。

Video Credit : Anthony Wesley(Cited from web via YouTube )

アンソニー・ウェズリー氏によって2010年6月3日に撮影された衝突の様子。こちらは動画です。左上で2秒間に渡って何かが光っているのが見えます。画面では小さく見えますが、木星のサイズを考えるとかなり大きな爆発が起きているはずです。

専門家による検証の結果は出ていませんが、今回も天体衝突であることはほぼ間違いなさそうです。木星への小天体の衝突がリアルタイムで映像に捕らえられるのは初めてのこと(シューメーカー・レヴィ9彗星の衝突は木星の裏側でした)。

彼らの発見は即座にネットのフォーラムに公開され、案の定話題騒然。惑星の継続的な観測はアマチュア天文家の独壇場(プロの天文学者はあまりこうした継続観測はしません)とはいえ、木星を見ているのは1人や2人じゃありません。ウェズリーさん豪運ですね。

木星は地球を守っている?

ある研究では、直径1.5kmほどの小惑星の木星への衝突は90年~500年に一度ほどの頻度でおきているという試算が出ています。今回観測された2010年の衝突がどれほどのサイズの小天体によって引き起こされたのかはまだ良くわかっていませんが、これほど頻繁に衝突が観測されるということは、木星への天体衝突はこれまで考えられてたよりずっと多いのかもしれません。
ref. Cratering rates in the outer Solar System (ScienceDirect)

実はこの木星への天体衝突、地球に住む我々にとっても他人事ではありません。

ジョージ・ウェザリル(George W. Wetherill)氏は、1994年に、もし太陽系に木星や土星のような巨大惑星がなかったとすると、火星や地球などの内側の惑星に飛来する小天体はずっと多かったかもしれない、とする研究を発表しました。つまり、かなりの数の小天体が木星や土星の巨大な重力によって捉えられたり弾き飛ばされたりして、それ以上内側へ落ちていくことを妨げられているかもしれない、というわけです。もしかすると、木星は我々を小惑星から守る傘なのかもしれません。
ref. Possible consequences of absence of“jupiters”in planetary systems (SpringerLink)

全く反対に、むしろ巨大惑星の存在は地球への隕石の衝突の可能性を増やしている、と考えている天文学者もいます。どうやら、巨大惑星の重力によって軌道を乱される小惑星も少なくないから、一概に守っているとはいえない、ということのようです。上の研究は、地球への隕石衝突は太陽系の最外縁部からやってくる天体によるものとされていた時代の試算です。近年、地球の近くにもけっこうたくさん小天体が漂っていることが分かってきていて、こうした天体の軌道を捻じ曲げることでむしろ木星の存在は脅威になっている可能性がある、とのこと。
ref. Jupiter – friend or foe? I: the asteroids (arXiv)
ref. Jupiter – friend or foe? II: the Centaurs (arXiv)

ジーン・シューメーカー氏が予測したように、これまで地球には幾度となく巨大な隕石が衝突し、そのたびごとに気候の急変が引き起こされてきたと考えられています。こうした衝突がある生物を絶滅に追いやったこともあったでしょうし、逆にライバルを一掃することで別の生物に幸を奏したこともあったかもしれません。どちらにせよ、今我々が見る世界が形作られる上で、小惑星の衝突が大きな役割を果たしていたであろうことは想像に難くありません。そして、木星の存在はその衝突の頻度を左右している可能性があります。

もし、これまで考えられていたより木星への小天体の衝突が頻繁に起きているとすれば、太陽系の形成に関するシナリオを見直さなければならないかもしれません。そして、それは地球の地質学的な歴史を書き換えるかもしれないのです。

Referance

Anthony Wesley Impact on Jupiter, June 3 2010
http://jupiter.samba.org/jupiter/20100603-203129-impact/index.html

YouTube – Asteroid Impact on Jupiter; Anthony Wesley (2010.06.03)
http://www.youtube.com/watch?v=Yo6LHljBKW8

Christopher Go  JUPITER 2010
http://jupiter.cstoneind.com/

Comet Shoemaker-Levy 9 – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Comet_Shoemaker-Levy_9

Galileo Images of Fragment W Impact (NASA/JPL)
http://www2.jpl.nasa.gov/sl9/image237.html

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Sees Comet Fireball on Limb of Jupiter (07/17/1994)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/1994/30/

HubbleSite – NewsCenter – Color Hubble Image of Multiple Comet Impacts on Jupiter (07/22/1994)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/1994/1994/34/

“Asteroids: Deadly Impact” National Geoglaphic 1997 (邦題:『衝突!彗星と小惑星』)

USGS Astrogeology: Eugene M. Shoemaker
http://astrogeology.usgs.gov/About/People/GeneShoemaker/

2009 Jupiter impact event – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/2009_Jupiter_impact_event

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Images Suggest Rogue Asteroid Smacked Jupiter (06/03/2010)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2010/16/full/

A. Sánchez-Lavega. et al. “The impact of a large object with Jupiter in July 2009” arXiv:1005.2312v1 [astro-ph.EP] 2010
http://arxiv.org/abs/1005.2312

HubbleSite – NewsCenter – Hubble Captures Rare Jupiter Collision (07/24/2009)
http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2009/23/

ScienceDirect – Icarus : Cratering rates in the outer Solar System
http://dx.doi.org/10.1016/S0019-1035(03)00048-4

George W. Wetherill “Possible consequences of absence of“jupiters”in planetary systems ”  Astrophysics and Space Science (via SpringerLink)
http://www.springerlink.com/content/n101761085801516/

J. Horner, B. W. Jones “Jupiter – friend or foe? I: the asteroids” arXiv:0806.2795v3 [astro-ph] 2008
http://arxiv.org/abs/0806.2795

Jonti Horner, Barrie W Jones “Jupiter – friend or foe? II: the Centaurs” arXiv:0903.3305v1 [astro-ph.EP] 2009
http://arxiv.org/abs/0903.3305